ずっと気になっているナゾの吊り橋が岐阜県にある。

 その橋の名は、木天蓼橋(またたびきょう)。コンクリート製の吊り橋という変わった人道橋で、20年間以上にわたり廃道の状態で放置されていた。しかし、昨年再訪すると大きな動きがあった。アクセスするための道が整備され、全面通行止だったのが歩行者のみ通行できる状態に変わっていたのだ。

 しかし、木天蓼橋を渡ったところで道は行き止まりで、これといったものは何もない。何のために架けられた橋なのか、なぜ今になって整備されたのか、謎だらけの橋だった。

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渡った先が行き止まりになっているにもかかわらず立派な橋

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“崩落のため全面通行止”

 再訪したのは2022年6月のこと。岐阜県揖斐川町の県道268号を走っていると小津トンネルが現れるが、トンネルには入らず右脇の旧道へと入る。この旧道の先に木天蓼橋がある。

木天蓼橋を目指して旧道を進む

 旧道の入り口は数年前までは草木ボーボーで荒れ果てており、“崩落のため全面通行止”という看板が掲げられていた。それがきちんと整備され、看板は“車両通行止 歩行者通行可”に変わっていた。つまり、歩行者の通行が解禁されたのだ。わざわざ歩行者通行可と書いてくれているのが嬉しい。

歩行者のみ通行が許可されている

 高知川に沿って伸びている旧道は、土砂や草木は撤去されているものの、無数の落石や木の枝が転がり、歩きやすいとは言い難い状態だった。

崩落した道

 数分間歩いていると、舗装路が崩壊している現場に差しかかった。道路の3分の2が崩れ落ちてしまっており、川底まで数十メートルほどの高さがある。万が一落ちてしまったら、重傷は免れないだろう。

 おそらく、この崩壊があったので、数年前まで全面通行止になっていたものと思われる。現在は崩落箇所に棒を立ててロープを張り、残った3分の1の道幅で歩行者のみ通行できるようになっている。この状態が本当に安全なのか素人には判断がつかないが、崩壊箇所から大きな木が生えているので、少なくとも10年間以上はこの状態を保っていると思われる。

 旧道を歩くこと10分、荒れた旧道に似つかわしくないピカピカの橋が見えてきた。木天蓼橋だ。高知川に沿って伸びる旧道から対岸に向けて木天蓼橋が架けられている。

木天蓼橋は吊床版橋という吊り橋の一種だ

 コンクリートとステンレスで造られた木天蓼橋は弓なりにしなっているが、従来の吊り橋には欠かせない主塔やワイヤーが一切見えない。橋台の間に鋼材を張り、それをコンクリートで包んで橋にした吊床版橋というもので、これも吊り橋の一種だ。