かつての鹿屋駅跡地には何がある?

 結局大隅線はクルマ社会にはあらがえず、お客があまりに少ないという理由で1987年に廃止されている。商店街やスナック街のある国道沿いの中心市街地から肝属川を渡った西側をしばらくまっすぐ南に歩いてゆくと鹿屋市役所が見えてきて、それがかつての鹿屋駅の跡地だ。

 つまり市役所の前はかつての“鹿屋駅前”。その面影はほとんど残っていない。近くにかのやグランドホテルという立派なホテルがあるが、それは古の駅前旅館に発するものなのだろうか。

 

 そんな旧鹿屋駅、鹿屋市役所の脇には、鹿屋市鉄道記念館が建っている。かつて、鹿屋に鉄道があった時代の面影を偲べる、数少ない施設だ。

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 ただ、いかんせん中心市街地と鹿屋駅、遠いのだ。歩けなくもないが、20分から30分。最初はもっと中心市街地に近い場所に駅があったようで、市街地もそれにくっついて発展したのだろう。

 が、駅が移転していまの市役所の場所に移ってからは、“市街地から遠い駅”になってしまった。それもまた、鹿屋が鉄道を失う遠因になったのかもしれない。

 中心市街地は寂れつつ、その中にもスナック街という南九州らしい雰囲気を残し、鉄道の駅(跡)はちょっと外れた場所にひっそり……。

 これって、別に鹿屋に限ったことではない。鉄道があろうとなかろうと、地方都市のありさまはどこもたいして変わらない。さみしいけれど、現代日本の地方都市のゆく道に、鉄道はあまり関係ないのかもしれない。

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