YMOは3人そろうと、どこか空気がぎこちなくなりがちだったが…
メンバーそれぞれは、ソロのインタビュー取材ではどちらかといえば饒舌で話が弾むのに対して、YMOとして3人が揃うとどこか空気がぎこちなくなりがちだった。
牽制し合うように沈黙の時間ができると、「いまふたりともすごくいいことを言おうとしてますよ」などといつもジョークまじりで雰囲気を溶かしてくれるのが高橋幸宏だった。
サービス精神も旺盛だった。2007年のYMO(HASYMO名義)再結成をこっそり教えてくれたときは、車を運転しながらこんな新曲をYMOでレコーディングしたんだと完成したばかりの「RESCUE」という曲をカーステで聴かせてくれた。
2008年にYMOがロンドンでコンサートを行ったとき、打ち上げ会場で80年代のYMOシャツを着たファンが記念撮影を求めてきた。このときも気さくに応じた高橋幸宏だったが、「ねえ、なんかあのシャツちがわない?」YMOシャツは1980年に高橋幸宏がデザインした白いシャツにYMOのロゴが散りばめられたもの。よくよく見るとそのファンのおじさんが着ているYMOシャツはただの白いシャツにマジックペンでYMOロゴを手書きしたものだった。
2011年のYMOのアメリカ・ツアーは最終公演地がサンフランシスコで、たまたま羽田への帰国便が一緒になった。
ぼくは妻と一緒に11時間強のフライトでへろへろでくたくたとなって羽田に到着したが、荷物を待っているところに同じ便の高橋幸宏・喜代美夫妻が颯爽と、まさに文字通り颯爽と登場してきたことも忘れがたい。パリっと、スキっと、こちらと同じように長時間のフライトを過ごしたとは思えない麗しい様子で、まさに一陣の爽やかな風が吹いたような。
2018年、YMOの3人が演奏したロンドンでの出来事
2018年にはロンドンの細野晴臣公演でYMOの3人が揃って観客の前で演奏する(最後の)機会があった。ゲスト出演のため東京からはるばる駆けつけた高橋幸宏は終演後も本当にうれしそうだった。遊びに来たスティーヴ・ジャンセンと楽しげに話をしていたことも印象に残っている。
最後に言葉をかわしたのは2019年8月だったと思う。高橋幸宏主催の音楽イベント“WORLD HAPPINESS”が青森県の八戸市で開催され、その打ち上げの場だった。ぼくが編集したYMOの写真集『40ymo 1979-2019』(撮影・三浦憲治)ができたばかりで、その感想などを伺った。「40年ってあっという間だよね。この頃(1980年)の写真見るとまだ20代。写真を見て蘇ってくる感情ってあるなあ」という言葉が印象的だった。
“WORLD HAPPINESS”は2008年から開催されていて、そこではYMOを始め、高橋幸宏ゆかりのアーティストがいつも多数参加していた。初の地方開催となったこの八戸でもそれは同じで、打ち上げ会場となった居酒屋の座敷で、いつものように幸宏さんは座の中心となって、若い世代のたくさんのアーティストと楽しそうにずっと談笑していた。