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 ちなみに、いかほどのお値段の植物を購入したのか? 

「僕が購入したのは、19800円の『アガベ チタノタ ブラック アンド ブルー』という植物です。アガベは、塊根植物ではなく多肉植物ですけどね」(Aさん)

「良心的なお値段」とホッとしてしまいそうになるが、よくよく考えると19800円もそれなりに高いから金銭感覚が麻痺してしまう。高いものは数十万円に及ぶが、安いものになると数万円で購入可能。価格帯がピンキリという点も、塊根植物沼にハマる一因と言えそうだ。

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 前出・「RAFLUM」の小寺さんが説明する。

「当店は、塊根植物をメインに多肉植物、灌木なども扱うのですが、平均単価は4万円前後です。たとえば、日本で栽培された株の場合、小さいものだと10000円~16000円ほどです。一方で、原産国から輸入した希少価値が高いものになると数十万円になります」

日本では栽培できない理由

 では、何をもってして希少価値が高くなるのか。先の初心者Aさんは、「同じ樹形の株が2つとない」と話していたが。

「仰るように、同じグラキリスであっても、同じ個体は二つとありません。グラキリスはぷくっとしたフォルムが人気を集めているのですが、すべてフォルムは異なります。珍しい、美しい……そういった造形ほど価格が高くなる傾向があります。また、グラキリスや(オペルクリカリア)パキプスといった塊根植物は、マダガスカルにしか生息していません。そのため価格が高くなるんですね」(小寺さん)

同じグラキリスでもフォルムが違う。一つひとつに個性がある

 店内に置かれたグラキリスを比較するとわかるのだが、たしかに同じ品種でもフォルムや色合いが違う。日本でグラキリスを栽培すれば価格帯を抑えられ、もっと手ごろな値段になるような気もするのだが、なんでも日本で栽培しても、マダガスカル産のようにはならないそうだ。「諸説あるのですが」と前置きした上で、小寺さんが続ける。

「日本の環境よりもはるかに過酷な環境下に自生しているので、風や土埃などにより長い年月をかけて表皮がツルッとしていくと言われています。また、現地の野生動物の毛繕いも影響がある(動物が植物に肌をこすり付ける)と言われています。こうした条件から、マダガスカル特有の丸みを帯びたグラキリスになると言われ、希少価値が高くなる。他の国で育成しても、このような美しいフォルムには、なかなかなりません」

園芸は「カッコいいモノ」に

 こうして眺めていると、御朱印のようにそれぞれに個性があり、収集心をくすぐる面白さがあるのもたしかだ。一昔前は、磯野波平よろしく年配者の趣味というイメージが強かった園芸だが、御朱印集めもいつからか世代関係なく楽しむ趣味になったではないか。そう考えると、園芸だって進化していてもおかしい話ではない。