動産的価値をはらむ塊根植物
たとえば、一般的なサイズのグラキリスの場合、ベアルート株は大、中、小とあり、相場は1万円から~5万円ほど。一方、最初から根が出ている同サイズのグラキリスを購入する場合、樹形にもよりけりだが価格は1.5倍ほどとなる(樹形の良いまんまるとした株はそれ以上に)。自分で根を出すことに成功すると、“利益が生まれる”ことになる。
実は、こうした動産的価値(リセールバリュー)も、少なからず塊根植物が人気になっている一因というから興味深いだろう。まるで命を持つ美術品だ。
「たとえば、個体差こそありますが、アガベは繁殖しやすい植物です。さらに、親株のDNAを子株が色濃く引き継ぐと言われています。そのため、アガベを中心部から切る“胴切り”を行う販売者も多くいます。中心部の成長点を失ったことで、アガベは子株を作り出し、生きようとします。この子株が2000円から10000円くらいで売れることもあります」(小寺さん)
よもやここまで価値のある植物だったとは。
購入時の注意点は?
また、動産的価値をはらむからこそ、昨今は、個人が塊根植物のベアルート株を購入しようと、専門店ではなく、オークションサイトやフリマサイト経由で安価で手に入れるケースもあるそうだ。
先述したように、根が出るかどうかは極めてデリケートだ。そのため、購入後に、「根が出ない。どうなっているんだ」と出品者との間でトラブルになるケースもあるという。
「塊根植物がブームになりつつあるからこそ、正しい知識と情報のアップデートが必要です」とは小寺さんの弁だ。
「我々は事前にしっかり調査し、信頼している方々とお取引きさせていただいていますが、それでも(オペルクリカリア)パキプスのベアルート株を10本購入して、3本ほどしか根が出ないということもあります。それくらい自分で発根させるというのは難しいんですね」(小寺さん)
投資的な側面こそ持つが、あくまで趣味の範疇で楽しむことが望ましいと言えそうだ。先に話を聞いたAさんもBさんも、「自分の所有している品種の価値が高騰していくことはとてもうれしいが、気に入った株を育成してみたい気持ちや、所有したい欲求が強いので、リセールはあまり考えていない」と口を揃える。
「アガベ」が世界的なブームに
しかし、複合的な魅力を有する塊根植物やアガベが、その枠の中にとどまり続けられるかどうかはわからない。というのも、まだまだ過熱していく可能性の根っこを秘めていそうなのだ。