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 実際、人気ファッションブランド「NEIGHBORHOOD(ネイバーフッド)」は、アザーラインとして植物グッズに特化したブランド「Specimen Research Laboratory (SRL) 」を展開する。今では、園芸は「カッコいいモノ」でもあるというから時代は変わった。

「RAFLUM」をよく訪れる塊根植物歴が長いBさんは、こう力説する。

「個体により育ち方も違いますし、コンディション管理なども変わってくるところがペットを育てている感覚に近く、難しさもあり魅力的な部分になりますね」

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 なお、Bさんは330000円の「オペルクリカリア パキプス」を購入した猛者である。330000円――。筆者は膝を震わせながら、塊根植物の世界の取材を続けることにした。

オペルクリカリア パキプス。こちらは247500円(税込)

 こうした趣味を、「お金に余裕のある人だけが楽しめる貴族的な趣味」と一刀両断することは簡単だろう。

 しかし、塊根植物がブームになっている背景は、もう少し複雑のようなのだ。

「あるとき突然、枯れてしまうことも」

「塊根植物は生きていますから、花を咲かせます。グラキリスであれば、冬に休眠期を迎え、温かくなるにつれ葉を出し、1年~2、3年に1度黄色い花を咲かせます。しかし、このプロセスが難しい。光、水、温度、風という生育条件をきちんと管理していても、あるとき突然、枯れてしまうこともあります。一方で、ほったらかしにしていても生きる個体は生きるんですね」(小寺さん)

 造詣の深い小寺さんでさえ、その判別は読めないといい、塊根植物を育てることは一筋縄ではいかないそうだ。ひるがえってそれは、株から根を出す作業にも言えることだという。

「我々は、ベアルート株と呼ばれる根がむき出しのままの状態の株を輸入し、自分たちでグラキリスの根っこを出す作業を行います」(小寺さん)

 ベアルート株は、鉢から栽培株を抜き、コンポスト(植え込み材料)が取り除かれた根が裸の状態のことを指す。言わば、仮死状態のようになっている株なのだが、検疫上、現地の土や虫が付着している状態のグラキリスを輸入することができないため、「ベアルート株として輸入するしかない」と小寺さんは説明する。

発根するとこのような状態になる

 根っこを出すプロセスは、グラキリス以外の塊根植物も同様で、昨今、人気が急上昇している多肉植物のアガベも変わらない。発根することに成功して、はじめて塊根植物は葉を出すようになる。つまり、息を吹き返すというわけだ。

「初心者の方は、すでに根っこが出ている植物を専門店などで購入されますが、ある程度理解が深まってきた経験者は、発根作業から始めたいということで、ベアルート株を独自に購入し、根を出そうと試みます」(小寺さん)