1ページ目から読む
4/4ページ目

2015年は遭難発生件数と遭難者数が過去最多に

 同じく5日、岳沢に入山していた長野県勤労者山岳連盟に加盟する複数の社会人山岳会の14人グループのうち、南稜から奥穂高岳に向かった8人パーティ(20~60代の男女)のメンバー5人が、低体温症や疲労で行動不能となり、翌日、全員が長野県警のヘリに救助された。全員、命に別状はなかった。

 このときの天気の崩れは、強い寒気の流入などによって厳冬期並みの暴風雪になっていたわけではなく、この時期の3000メートル級の山としては平均的な、つまりはよくある悪天候であった。それでも標高が高い山では、状況はより厳しくなり、判断ミスやちょっとの油断が事故を招いてしまうことを再認識させられた2つの事例であった。

 2015(平成27)年から2017年のGWも、北アルプスをはじめとして全国各地の山で遭難事故が起きている。とくに2015年は、遭難発生件数173件、遭難者数208人で、いずれも現在(2022年)までの過去最多となった。2018(平成30)年のGWには、マスコミにも連日大きく報道された遭難事故が起きた。新潟県の五頭(ごず)連峰で親子が行方不明になったという事案である。

ADVERTISEMENT

駐在所に遭難の可能性を伝えていたことが発覚

 5月5日の午後2時ごろ、37歳の父親と6歳の男児が日帰りの予定で赤安(あかやす)山と扇山に入山したが、午後4時ごろになって、「道に迷ったのでビバークする」という連絡が家族に入った。そして翌朝、「これから下山する」という通話を最後に、連絡がとれなくなってしまった。2人の捜索は7日の早朝から開始され、その後、2つの山の北東にある松平山の登山口で父親の登山届が見つかり、複数の目撃情報も寄せられたことから、捜索の中心は松平山周辺へと移った。

 しかし、連日多くの人員が山に入り、ヘリやドローンも投入されたが、捜索は難航し、手掛かりはまったく得られないでいた。この間に、遭難者の父親が6日の朝に駐在所を訪れて遭難の可能性を伝えていたことが発覚し、連絡ミスにより初動が遅れたことを新潟県警が陳謝する一幕もあった。2人の遺体がようやく見つかったのは、遭難から24日が経過した5月29日のことだった。場所は松平山と赤安山の間を流れるコクラ沢の斜面で、父親の上に男児が重なるようにしてうつ伏せに倒れていた。死因はいずれも低体温症とみられる。