衣料品の輸入浸透率(国内生産量と輸入量を足した数値から輸出量を引いて出す)は98.2%(2021年)と、国産の衣料品の割合はわずか2%弱だ。1991年に51.8%だったことを考えると、この30年で大きくサプライチェーンが海外に移ったことがわかる。コロナ下で、東南アジアで感染が拡大し、ユニクロの新製品の発売が遅れるなどのニュースがあったが、もはや日常的に身に着ける衣料品は海外生産に頼りっぱなしなのだ。
ファストファッションの定着で国内の縫製工場の加工賃が下がり続けるなか、現場を支え続けたのが外国人だった。岐阜県既製服縫製工業組合の平嶋千里理事長は朝日新聞の取材に対し、「ここ20年、我々の業界は技能実習制度に依存してきた」(2019年3月25日付)と答えている。
ホワイト企業の加入しか認めない
ただ、その労働環境は劣悪だった。
内ケ島社長は創業前の2002年から7年間、会社員として岐阜県関市内にある婦人服の縫製工場で働いた。内ケ島社長の働く縫製工場にも中国人の実習生が働いており、その姿をずっと見てきた。
「休みは週に1回あるかないかで、仕事は朝の8時から夜の10時頃まで。タイムカードは定時の午後5時に打刻しますが、200時間近い残業をしていたと思います。何度か実習生の給与明細を見ることがあったのですが、それでも手取りは12万円程度。適正な残業代は支払われず、そんな職場だから当然、ボーナスもありません」
だからこそ、自分が実習生を受け入れる際は、きちんとした労働環境を準備しようと思った。
内ケ島社長は言う。
「上代(販売価格)が1万円以下の商品を扱っていては、収益となる加工賃が残らず、従業員に適正な賃金を払えない」
エトフェールでは、オーダーが100着以下の少量ロットの製品を扱う。上代が10万円以上するものも珍しくはない。
「日本人が働きたいと思えるアパレル産業にすることが夢だ」
内ケ島社長はそう語気を強める。2021年6月時点で、エトフェールにはグェンを含む2人のベトナム人実習生と、4人の中国人実習生が働いている。
実習生1人当たりの監理費を相場より安く設定
先述の通り、海外に支社のあるような大企業は自ら実習生を受け入れることができるが、実習生を採用する企業の約98%は「団体監理型」での受け入れだ。監理団体を通じてしか、実習生の受け入れができない。
内ケ島社長が実習生の受け入れのため、監理団体に選んだのが、2019年に監理団体許可を受けたばかりのMSI協同組合(岐阜市)だった。同組合には約30社が加入するが、エトフェールのような「ホワイト企業」以外の加入は認めていない。