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 監理団体は非営利団体に限られ、実習実施者からの監理費が主な収入源となるが、実習生1人当たりの監理費を相場より安い2万2000円(2022年時点)に設定している。 

 毎月の監理費が経営を圧迫し、実習生の待遇悪化につながることも多いためだ。 

 外国人技能実習機構のアンケート調査によれば、監理費の平均値は技能実習1号で1人当たりの月額が3万551円、技能実習2号で2万9096円になっている。 

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MSI協同組合に加入する実習実施者の工場をのぞくと、入口などわかりやすい場所に最低賃金に関する母国語のリーフレットがあった(著者提供)

労働搾取のないフェアトレードな商品

 ジャケットの左襟に、「SDGs」のピンバッジが付いていた。

「うちの協同組合に加入し、実習生を受け入れるためには、法令通りの労働環境にあるかはもちろんのこと、経営者の考え方や寄宿舎の状態など、とにかく審査が厳しい。だから、加入者がなかなか増えないんです」

 MSI協同組合の井川貴裕代表理事(48歳)は、そう言って、苦笑いを浮かべた。 

MSI協同組合の井川貴裕代表理事(写真左)と岐阜一般労働組合の支部長も務める五十川松嗣事務局長(著者提供)

 SDGs(Sustainable Development Goals)とは、2015年の国連サミットで採決された「持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」のことだ。

「働きがいも経済成長も」「人や国の不平等をなくそう」「つくる責任つかう責任」など、国連に加盟する193か国が2030年までの15年間で達成すべき17の目標が掲げられている。

少しずつ理解が広がれば、世の中も変わっていくはず

 井川代表は、こう語気を荒らげた。

「中国の人件費が上がったら、次はベトナムに。ベトナムも人件費が上がったら、次はミャンマーに。そうした焼畑農業をいつまで続けるのか。オーガニックコットン(綿)が毎年栽培され、生産者に適正な賃金が払われることで、産地と生産者を守り、持続可能な暮らしを送ることができるのではないか」

 2021年5月、アメリカ税関がユニクロ(ファーストリテイリング)製品の輸入を差し止めた。アメリカ政府は強制労働を理由に中国・新疆ウイグル自治区の生産団体が関わる綿製品の輸入を禁止していた。ユニクロはホームページで「弊社製品の生産過程において強制労働が確認された事実はありません」としているが、エシカルファッション(エシカルとは倫理的・道徳的という意味の言葉で、人や社会、環境に配慮した衣料品のこと)が注目されるなど、世界の潮流が変わりつつある。

「デフレ経済から抜け出せず、安ければいいと考える消費者が多いですが、その製品が労働搾取のないクリーンなフェアトレード商品なのか。少しずつ理解が広がれば、世の中も変わっていくはずです」(同前)