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岸田首相は「決断できない」ではなく「本気じゃない」

――確かに、家計ならばやりくりできる額かもしれません。

泉 スナック通い減らしたり、新しい冬のコートをあきらめたりして、夫婦でやりくりすれば1カ月8500円は出せますよ。それと同じことで1.7%の財源くらい、惰性で税金が使われているところを見直すだけで確保できるはずなんです。

――決断すればできる、と。

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 『裸の王様』という寓話、ご存じですか? 「王様は裸」という真実がそこにあるのに、誰もが「王様は立派な服を着ている」と信じ切っている。「財源は確保できる」という事実を明石市が示しているのに、みんな「財源はない」と言い張っている。私は「王様は裸や!」という少年であらねばと思っていますが、いま政治にかかわる人の多くはそうではない。

 

――「異次元の少子化対策」の財源に関する具体的な案もいまだ出ていません。

 岸田首相は安倍元首相の国葬や防衛費の予算を即断していますよね。彼は「決断できない人」じゃないんです。目的が違えば財源を確保しているんです。でも子ども予算だけ「検討」と言うばかりで具体的な施策を打ち出さないのは、私から言わせれば「本気じゃないから」やろね。

子育て支援の“壁”「産業復興が先」「年寄りを大切にしろ」

――泉市長は2011年に市長選に初当選して以降、一貫して子育て政策に重点を置いてこられました。 

 よく「明石は子どもばっかり」みたいに思われてるけど、目指しているのは「みんながハッピーなまち」やねん。なので、まずは子どもから始めたにすぎない。でも子育て支援を打ち出した当初は誤解されてましたね。

明石駅前の一等地につくった「あかし市民図書館」。「子どもが親の財布を気にせず絵本を好きなだけ読める環境をつくりたかってん」(泉市長) 提供:明石市役所

 議員や職員は「産業復興が先だ」、市民は「年寄りを大切にしろ」で周りは敵ばかり。でも私にはこれをやり遂げる使命があると思っていたから、どんなに石を投げられてでも進める覚悟でした。

――その原動力はどこにあるのでしょう?

 弟が社会から受けた理不尽への怒りと復讐心、やね。4つ下の弟は脳性小児まひで生まれ、「一生起立不能」の診断を受けました。当時は優生保護法があって、兵庫県では「不幸な子どもの生まれない運動」をしていたので、障害のある子に世間が冷たくてね。

――当時は今以上に障害者の方への支援も整備されていませんよね。