記者が父の病室に入ってきた
ーーお父様の介護が始まってから取材を受けるようになられたとのことですが、倒れた当時、お父様の病室に入り込もうとした雑誌記者がいたそうですね。いまだったら考えられない話だなと。
渡辺 そんなこともありましたねぇ。患者さんとか庇護される側を撮ることも取材することも断固として拒みますけど、ワイドショー出身の私としては、その時の記者さんの立場がわからないわけではないので悩ましくもありました。デスクに指令されたら、真面目なタイプほど押しかけてしまうわけで。
あれから時が経って、取材する側もされる側も節度を共有できるようになったのなら、歓迎すべきことですよね。ただ一点、時の流れとか、上からの命令とか、炎上回避の策とかじゃなく、いつの時代も自分のなかで変わらない礼節を保っていられたらとは願っています。揺らぎながら考えながら、私自身、今も模索中ですけれど。
それにしても、当時は「他の患者さんのこともお考えください!」と、鬼の形相だったでしょうね。思い出すと自分でもコワい。
自分たちの始末をどうつけていこうか
ーー渡辺さんご夫婦は、老後をどう過ごせればと考えていますか。
渡辺 このまま日々、暮らして、気づくと寿命を迎えられたら、なんて思ってます。夫婦ふたりと動物たち、それでも毎日、予期せぬ出来事は起こって、あっという間に年の瀬になったりするので。そんな中で、家終いして、墓終いして、ご迷惑をかけず気持ちよく全うするように計らっていけたら。
母が逝った日、庭の金木犀が二度咲きしたんですよね。逝きたいタイミングで逝ったんだなぁと思えるからか、「今度は、あなたたちの新しい時間をお過ごしなさいね!」と言われてる気もして。だから、いつかわからないその日がくるまで、自分たちなりに楽しく、機嫌よく、丁寧に暮らしていきたいです。
その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。