見た目に気を使う…「女性芸人あるある」
——あの視点も当時すごく斬新だったと思うんですよね。以前、Aマッソ加納愛子さんが「頭で考えていることはフィクションなんだけど、出す体が(女という)ノンフィクション」と話していたのですが、後藤さんもその感覚がわかりますか。
後藤 それは私も感じていました。だから、常にあのスタイルでいたというのもあります。色眼鏡とまで言わないけど、私がスカートを穿いたら、まず見方が変わっちゃうから。それで毒づいてもね、みたいな。それは気を使っていたかな。
見た目に気を使っちゃうっていうのは、女性芸人のあるあるですね。見た目で引かれちゃうとネタが入ってこない。「所詮女だから」って見られちゃう。
——当時は、女性芸人がとても少なかった時代ですよね。
後藤 そうですね。ピンだとにしおかすみこさんやだいたひかるさん。コンビだと、ちょっと上にオアシズさんがいましたが、当時は光浦(靖子)さんしかメディアに出てなかった。光浦さんにはかわいがってもらっていました。光浦さんも家が近所だったので、旅行に行ったりご飯に行ったり、お家で手料理もごちそうになりました。
そういう、ちょっと上の世代の方とは交流があったんですけど、同じくらいに出てた方とは全くつながりがなかったです。女性は特に。ライバルではないけど、みんな壁を作ってた気がします。
——それはなぜなんでしょう。
後藤 なんで作ってたんだろう……。結構みんな癖のあるネタだったから、それを演じきってたのかな。一匹狼だからつるんじゃいけない、みたいな。連絡先も全然知らなかったです。
女芸人だけのライブというのも昔あって、にしおかさんやだいたさん、いとうあさこさんとかが出てたんですけど、そこですごく印象的だったのが、みんな鏡を向いて、誰ともしゃべらず……一切交流しないっていう。
——ピリピリしていましたか?
後藤 というより、うまく人としゃべることができない人の集まりだったんじゃないのかなと思います。当時の女芸人の楽屋はそういう感じでした。
——女性芸人へのインタビューでよく聞いた言葉が「孤独」だったのですが、孤独だったなという感覚は当時の後藤さんにもありましたか?
後藤 最終的には一人でしたけど、私の場合は……子どもからスタートしたからか、結構気にかけてもらっていたほうなのかなと思います。ただ、舞台に出ると孤独しかなくて。お客との温度差はすごいから。