——私も学生時代によく劇場に通っていて、当時のお笑いの強烈さとか、ファンの熱さは身をもって経験していました。女性ファンが女性芸人に嫉妬するっていうのもそうですし、女性芸人を面白い存在として見るにはフィルターがかかりすぎていたのかもしれない。
後藤 他の女性芸人は大人になってからこの仕事を始める人が多かったですけど、私は子どもから始めていたので、そう考えると、そこは孤独じゃない何かが唯一あったのかなぁ。年のわりには芸歴が長かったんですよね。みんな2~3年という時に、もう7年とかだったので。
ネタも、テレビが求めるものにだんだんと変化
——裏を返せば、自我がしっかりする前に芸人の世界にいたということですよね。
後藤 そうなりますか。しかも、当時は芸人はほぼお笑いタレントだったから。今はネタ番組がしっかりあって、バラエティもあって、両方出る人が実力があるっていう認識になってるのかな。ちゃんとした評価がされるようになりましたよね。
私がいる時は、ネタ番組も深夜のちょろっとした枠しかないし、そこに出る人たちがバラエティ番組に出ることはほぼなかった。だからみんなライブに賭けてました。
——後藤さんはその中でかなりテレビにも出られていた。
後藤 そうですね。ネタも、最初は自分が気になる身近なことについてだったんですけど、だんだんとそれもテレビの求めるものに変わっちゃったんですよ。「誰々について」とか「春ドラマについて」とかそういうお題が来るんです。
その辺から面白くなくなっちゃったんですよね。自分がやりたいものと求められているものがちょっとずつズレてきて、もういいかなという気持ちになっちゃった。
——芸能人の悪口を求められることもありましたか?
後藤 うん。当時は悪口も全然オッケーだったので。こっちは大好きなのに、なんだかなと思いながら言うこともありました。
——それは苦しいですね。
後藤 そうですね。そんなに興味もない人を「でも次売れるから」という理由でお題にされて、テレビを見て一生懸命研究するんだけど、何も響かないことも結構あったし(笑)。
——自分の中から自然に出てきているものじゃないから。
後藤 そう。でも、書かないといけないので。当時、作家もいなかったんですよね。