日本人NBAプレイヤー、八村塁がトレード移籍して話題の名門ロサンゼルス・レイカーズ。その80年代の黄金期の勃興を描いたドラマが『ウイニング・タイム -レイカーズ帝国の誕生-』(U-NEXTで配信中)だ。後に“伝説”となる二人のルーキーが主人公。一人は言わずと知れたスター選手、マジック・ジョンソン。91年にHIV感染を公表した。冒頭は彼がHIV陽性を知らされた直後の場面が描かれる。一見、シリアスな作品かと思いきや、そのムードはもう一人の主人公の登場で一変する。

「バスケットボールは……まるで最高のセックスだ!」

 一夜を共にした女性の横で脂ぎった中年男がバスケ愛を語る。彼の名はジェリー・バス。時は1979年。不動産で財を成したバスはこの年、念願叶ってレイカーズを買収。新米オーナーとなる。しかし、当時のNBAは人気が低迷し、レイカーズも優勝から遠のいて経営は火の車。そんな苦境を二人のルーキーがたった1年で変革する。今も語り継がれる“名門誕生”の物語だ。

ADVERTISEMENT

©佐々木健一

 このジェリー・バスという名物オーナーが滅法面白い。無類の女好きで独特な髪型は薄毛隠しのペテン師風。反面、生い立ちは貧しく、奨学金で大学へ行き物理化学の博士号を得たため「Dr.バス」の愛称で親しまれた。一代で財を成した頭脳明晰な叩き上げ。自由奔放だが憎めない人物だ。観客を楽しませるハーフタイムショーやアリーナの命名権、試合中継の放映権収入などスポーツビジネスの基礎を築いたアイデアマンでもある。

 マジックとバスは共にお喋り好きで女好き。馬が合い、選手とオーナーというよりまるで親子同然の関係だった。

 ドラマは映画『バイス』などの奇才アダム・マッケイによるケレン味に溢れているが、実録はアントワーン・フークア監督のドキュメンタリー『レイカーズ伝説 ジェリー・バスという男の物語』(ディズニー+で配信中)が詳しい。

INFORMATION

『ウイニング・タイム -レイカーズ帝国の誕生-』
https://video.unext.jp/title/SID0071172