文春オンライン
地位もお金もあるIT起業家はなぜ“お坊さん”になったのか? 小遣いは「生涯108万円」、妻は「ふざけんな!」と激怒…

地位もお金もあるIT起業家はなぜ“お坊さん”になったのか? 小遣いは「生涯108万円」、妻は「ふざけんな!」と激怒…

小野裕史さんインタビュー#1

2023/02/25
note

佐々井さんの電話番号をゲット。かけてみると…

――日本人向けのガイドブックにはまず載ってないですよね。

小野 そうですね。出発1週間前になって、インドに関する本を何冊か読んでみようと思い、試しに「佐々井秀嶺」で検索したんです。そしたら何冊も関連本が表示されたんですけど、白石さんの本が一番、さくっと軽く読めそうでポチリました。

――さくっと(笑)。選んでくださり、ありがとうございます。

ADVERTISEMENT

小野 それで、何気なく読み始めたら、もう衝撃の連続で……。自分が殺されそうになっても、徹底的に貧しい人の味方で、55年間もずっとインドでがんばっている。でも、聖人君子ではなく、俗っぽいところもあってチャーミング。インド、おもしろそうだから行こうぜ!という軽いノリが、その瞬間から、佐々井さんのいるナグプール訪問が旅の最大の目的になったんです。

 

――実際に、ナグプールで佐々井さんにお会いできたんですよね?

小野 友達のそのまた友達という、実にうすーい縁なのですが、佐々井さんをご存知の方が佐々井さんの携帯番号を教えてくれたんです。ちょうど我々はインドの西、ムンバイにいたのですが、「そんなに気軽にどこの馬の骨か分からない奴が、1億5000万人の頂点に立つ人に電話していいのか?」とおじけづいたものの、この機会を逃したら一生、お話しすることもないと思って。

「おう、とりあえず来い! いつだ?」

――つながりましたか?

小野 ええ。そしたら、「おう、とりあえず来い! いつだ?」とダミ声で。「え? 会えるの?」って。で、タカハシとともに、そのままナグプール行きの夜行列車に飛び乗ったんです。

 翌朝、駅に着いて、佐々井さんのいるインドラ寺に向かいました。恐る恐る開けっ放しのボロボロの部屋を覗き込むと、「おう! 来たのか」と佐々井さんが歓迎してくれた。僕にとってはスーパースターだったので、お会いできた時は嬉しかったです。

佐々井さんの小さく古びた部屋で、頭を丸め、インドの袈裟を着た小野さん(小野氏提供)

――どんな印象でしたか?

小野 その時の佐々井さんは体調が優れず、声も張りがない。もっと雷に打たれるような衝撃を想像していたので、ちょっと拍子抜けしたのが正直な感想です。しかし、その翌日から佐々井さんが発見した仏教遺跡や地方のお寺に同行させていただくと、貧しい人たちの相談に乗っていたり。自分の命を捧げて人々に尽くしている様子を見て佐々井さんのすごさを実感するようになりました。