「生涯108万円」の小遣いで生きていけるのか
――逆出家(笑)。それで、「日本の衣」は見つかったのでしょうか?
小野 いきなり得度したものの、まったく仏教について学んでいないので、日本のどの宗派が自分に合っているかさえ分かりません。寅の刻に起きて、仏教2500年の歴史を学びながら、夢中で知恵や信念を求めて本を読んでいます。自分の人生でこれほどまで熱心に勉強したことはありません。
イメージが悪かった日本の仏教ですが、学んでいくうちに、素晴らしいお坊さんもたくさんいることが分かりました。オーストラリアへの移住が落ち着いたらまた日本国内を歩きながらゆっくり「日本の衣」は探そうと思っています。
――なるほど。ただ、オーストラリアに移住され、日本では「衣」を探して歩き、インドの佐々井さんに会いに行くとなると、「生涯108万円」のお小遣いは、すぐ尽きてしまいそうですが。
小野 オーストラリアでは、住まいと食べ物は妻が出してくれるので最低限、生きていくことはできますが、日本の自宅はもう引き払ってしまいました。しかし、国内では行脚するつもりなので定住する家は必要ないのです。
ここ10年ほど、休暇中は500キロを野宿しながら走ったり、知り合いの牧場で木こり生活を体験してきました。もしお金が尽きても、山や川に食べられる野草や魚がいるので、なんとか生きていくことはできそうな気がします(笑)。
――縄文人のようですね(笑)。
小野 ビジネスを再開するつもりはありませんが、たまに「出家した話を聞きたい」と、講演会のお礼をいただくことがあり、こちらは使わずにインドへの渡航費用として貯めています。
――少しは現金収入があるんですね。そうした毎日を「龍光」としてSNSで発信されていますよね?
小野 ええ、SNSで新人坊主の毎日を発信していたら、前世の僕と同じような疑問を抱えたIT起業家の若者が佐々井さんにお会いしたいと。先日、インドに連れていったら、なんとそのうちの一人がその場で頭を丸めて坊主爆誕と相成りました(笑)。
――まだ増えるんですか?(笑) IT起業家とお坊さんは近い存在なのでしょうか?(笑)
※#2では、小野さんがどんな「前世」をおくり、なぜ「仏教」へ結びついて行ったのか。怒涛の半生を中心にお送りします。(#2を読む)
インタビュー写真 今井知佑/文藝春秋
その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。