取材当日はインドの黄色い袈裟で登場
どうしよう、「ちょっと」どころか、すごく変な人ではないか。うろたえる私にさらに小野さんは衝撃の一言を放った。
「僕だけではないんです。地位もお金も手にしたIT系の若者が次にどう生きていくか迷っている。そんな若者から続々と相談が来るので、佐々井さんの人生や教えを伝えています。年末にも佐々井さんの元に行くのですが、また坊主が増えるかもしれません」と。
私は首を傾げた。才能も地位もお金もあるのに、何を迷うというのだろう? 会って5分で聞きたいことが山積みであった。どうしてIT投資家が突然、出家したのか? 仕事をせず生活はどうするのか? 社会貢献ならビル・ゲイツ氏のような財団を立ち上げるという手もあるではないか。なぜ出家なのか? 紆余曲折すぎる小野さんの半生とともに、仏教に人生をかける思いを後日、じっくり聞かせていただくことになった。
取材当日。小野さんはスーツではなく現在の正装なのかインドの黄色い袈裟を着て文春にやってきた。頭も念入りに剃り上げている。簡単に小野さんのプロフィールを紹介しよう。
1974年、札幌生まれ。東京大学大学院の生物科学修士課程を修了後、日本IBMを経て、シーエー・モバイルに第1号社員として転職。2008年よりベンチャー投資家として起業し、グルーポン・ジャパンやジモティーなど自らも創業に携わった。2017年、「17 Media Japan」(現:17LIVE株式会社)の代表取締役に就任。その一方で、南極や北極、サハラなどの極地マラソンに参加。
最初は軽いノリでインドへ
――プロフィールだけでも、文武両道で絵に描いたような人生の成功者だと思うのですが、まず、なぜいきなり地位も名誉も仕事も捨てて、頭を丸めることになったのか、改めて経緯を教えてください。
小野 話せば長くなりますが、ずっとIT界を突っ走ってきて、ちょうど昨年、「17LIVE」のCEOを降りた時、ぽっかり時間が空いたんです。それでちょっと旅にでも行こうと。そんな時に10年来の親友であるタカハシが突然、「坊主になったよ」と袈裟姿の写真を送ってきたんです。
――そのタカハシさんとは何者ですか?
小野 映像系の経営者です。ある日、「これだけ仏教が長く続いているのは何か深い本質があるはずで、それを勉強してみたい」と思い立ったそうで。すぐに出家させてくれるお寺を訪れたみたいです。
でも、まだお経も読めないし、袈裟の着方は間違っているし、ずいぶんカジュアルに坊さんになったなあ、と。そのタカハシが「俺も旅に一緒に行く!」というので、まわりの友人たちに「タカハシがせっかく坊主になったし、仏教が生まれたインドは?」とすすめられ決めたんです。最初はそういう非常に軽いノリでした。
――何日間、行ったのですか?
小野 昨年の9月上旬から34日間です。SNS上で「インドでおすすめの場所を教えて!」と書き込んだら、そのうちのひとつが佐々井秀嶺さんのいる仏教徒の街、ナグプールでした。お恥ずかしいことに、当時の僕はその地名も佐々井さんという名前も知りませんでした。