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「ふざけんな!」と妻は激怒

――元CEOが尼さんに頼まれ、客寄せパンダとは(笑)。それまで仏教への関心はあったんですか?

小野 いや、以前は関心どころかお墓や戒名で儲けているような悪いイメージがあって。実際はそんなお坊さんだけではないと思いますが、当時の僕は戒名もいらないし、法事で意味の分からないお経を聞いているのは時間の無駄と思っていたくらいです(笑)。

――奥様は驚かれたのではないでしょうか?

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小野 実はインドから「出家してしまいそう。帰国したら坊主かも」と妻にLINEしたんですよ。そしたら、「wwww(笑)」と返信があって。冗談かと思っていたのかもしれませんね。実際に頭を丸めて帰国して妻に「仏教系の大学に2年間、行っていい?」と聞いたら「ふざけんな!」と激怒されました。暮らしやすいオーストラリアへの移住もずいぶん前から計画していたので、余計、僕の心変わりに驚いたようです。

 

――奥様の反応は当然です(笑)。先ほどインドの袈裟の話をされていましたが、日本以外のほとんどの国では、お坊さんになる時に、お金や家族とも縁を切らなければならないと聞いています。

小野 まず、お金に関してですが、もう自分の財産は妻に渡して、私は生涯トータルの小遣い108万円だけでやっていくことにしました。そう決めたら、心が楽になりました。札束で殴り合うような業界にいて、深夜まで毎晩、仲間と宴会をしていましたが、今は酒も一切やめて白湯を飲み、普段も節約して遠くへ行く時は飛行機など使わず国内なら夜行バスに乗り、都内はほぼ徒歩で移動しています。

インド仏教を尊敬しているものの、妻とは別れられない…

――今日も雪駄で文春まで歩いて来られたんですね。それでご家族は?

小野 私は日本の仏教より佐々井さんのインド仏教を尊敬しているものの、今まで好き勝手やっていた自分を長年、支えてくれた妻とはどうしても別れることができません。実は年末にもう一度、インドを訪れたのですが、そのことを佐々井さんに話すと、「それなら日本の衣を探しなさい」と言われました。「あげたインドの衣は着てもいいけれど、戒律だからインド仏教のお坊さんとして表立って活動するのは控えなさい」ということです。

――なるほど、インドでは文字通り「出家」で家族と縁を切り、すべての子や母は、自分の子や母となるので、誰かを特別扱いはできません。日本も明治以前は一部の宗派を除き、結婚できませんでした。何も持たない象徴であるインドの袈裟を小野さんは着ているけれど、離婚しない限り、家族も家もお金もあるにはある。佐々井さんは小野さんの矛盾を指摘したんでしょうね。

小野 そうですね。その時は大ショックを受けましたが、佐々井さんのおっしゃる通りです。ただ、こんな自分勝手な僕ですから、いつか妻に愛想をつかされて「逆出家」され、離婚される可能性もおおいにあります(笑)。その時は、ひとりのインド仏教の僧として、インドで思い切り活動させてくださいと佐々井さんにお願いしました。