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東京都の担当者がICU死亡事故の記事を読んで、事実確認と厳しい指導

 副院長によると、東京都の担当者は、今回のICU死亡事故を文春オンラインで初めて知り、「記事の内容は事実か」と女子医大側に問い合わせをしてきたという。そして、インフォームドコンセントの徹底と、病理解剖の位置付けに関して周知徹底するように、厳しい指導を行った。

岩本絹子理事長(東京女子医科大学120周年記念誌より)

 女子医大のICUでは、過去にも重大な医療事故が起きている。9年前の2月21日、2歳だった孝祐くんが、鎮静薬プロポフォールを過剰投与されて亡くなった。当時、外部の専門家による検証委員会は、この痛ましい事故の再発防止策として、「ICUの診療体制の充実と強化」や「小児ICU」の新設などを提言した。

 これを受けて、女子医大は10人の集中治療専門医を集めて、ICUを国内屈指の施設に変え、海外から小児の集中治療専門医を招聘するなどして、2021年7月から小児ICUを始動させていた。

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 にもかかわらず、現経営陣の不可解な方針によって、集中治療専門医たちの大半が退職を余儀なくされてしまったのは前述したとおりだ。そして、現在も医療安全体制は崩壊した状態が続く。

死亡事故が起きても意に介さない経営陣

 再びICUで患者の命が失われたことに関して、経営陣の認識を如実に示すものがあった。女子医大の同窓会誌に掲載された、岩本絹子理事長らによる、一連の報道に対する釈明である。

「集中治療体制の継続に関する懸念を示す報道がなされましたが、各診療科の連携、協力のもと小児を含めた集中治療管理を滞りなく行うことができている」(「女医界2023年 January」〈一連の報道及び本学の対応状況等について〉より抜粋・要約)

「女医界2023年January」より

 死亡事故が起きても意に介さない経営陣に、大学の運営を任せていいのだろうか。なお、この同窓会誌ではICUの死亡事故に関しては何も触れられていなかった。これまでどおり、集中治療の専門医が対応していれば、あの患者は死なずに済んだかもしれない。

 これまでの経緯を考えると、死亡事故の本当の責任は、専門外の集中治療まで対応せざるを得なかった消化器外科医Aよりも、医療安全体制を崩壊させた現経営陣にあるのではないだろうか。それでもなお、岩本絹子氏ら現経営陣は、ハリボテとなりつつある女子医大医療の“体裁”だけは、平然と取り繕い続けるのである。

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