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 その名はズバリ「亀仙人街」。2階建ての古びたテナントに入っている店舗を見てみれば、タイマッサージ、タイ料理店、タイスナック、フィリピンのバーやレストラン、ハラルショップ、スリランカ料理店……アジアの店がひしめく雑然とした建物を制圧するかのように、屋根に掲げられた「亀仙人街」のでっかい看板。さらに傍らの別棟には、サリサリストア(フィリピンの雑貨・食材店)、スリランカ食材店、もう一軒タイマッサージ……いったいここはなんなのか。なぜここまで外国の店がごちゃごちゃに集まっているのか。そしてなぜ「亀仙人街」という名前なのか。あの超有名漫画に出てくるスケベな武闘家との関係は……ナゾがナゾを呼び、いまや「茨城七不思議」のひとつ(ほかの6つはなんだか知らない)と語られ、県内各地から物見遊山の客までやってくるという。

亀仙人街(写真提供:筆者)

2、30年前に日本にやってきて日本人と結婚

 その雑然とした佇まいにアジア慣れした僕もややたじろぐが、タイマッサージ店の裏口で野良猫と遊んでいるタイ人らしきおばさんに話しかけてみた。僕はかんたんなタイ語ならわかるのである。

「ピー(年上の人への尊称)、ここすごいですね。いろんな国の店ありますね」

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「あーそうだね。お客もいろいろだよ。日本人、パキスタン人、スリランカ人」

「なんでこんなにアジアの店が集まってるの?」

「マイルー(知らない)。ていうかあんたタイ語話せるの? なんで? あ、わかったタイ人の女がいるだろ」

 いやタイに仕事で住んだことがあって……とか話しているうちにほかのおばさんも出てきて、賄いだというソムタム(青パパイヤサラダ)とカオニャオ(もち米)が当たり前のように僕にも取り分けられた。

「キンシ(食べな)」

 おばちゃんたちはウボンラチャターニー県やウドンタニー県などイサーン(タイ東北部)の出身で、みんな夫が日本人。20年前、30年前に日本にやってきて、結婚後は介護や飲食などのアルバイトを転々とし、いまはこの店で働いているのだという。向こうからも口々に質問が飛んできた。

「あんたバンコクではどこで働いてたの?」「ええっ、結婚してないって!? 最近の日本人はこれだから」「タイ人の女、紹介してあげようか。バツイチだけど水戸に住んでる」