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積み込みに時間がかかる理由

「どうして積み込みに時間がかかるのでしょうね?」

正樹「何をどこに、どういう順番で入れたらいいか考えると、わけがわからなくなってしまって。入れては出してを繰り返してしまってます」

「積み込みは1人でするのですか?」

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正樹「はい」

「段ボールをどうやって入れたらいいかわからなくなって、何度もやり直しをすることになるのですね。入れ方を頭の中で想い描くのが苦手なのでしょうか?」

正樹「それができないです。最後のほうで、荷物が入らなくなって最初からやり直さないといけなくなります」

 正樹さんには、視覚情報を頭の中に保存し、そのイメージを移動・回転・組み合わせたりする力が弱いのではないかとの仮説が浮上してきました。それを確かめるために、WAIS-Ⅳ(ウェクスラー成人知能検査第四版・子ども用はWISC-Ⅴ)という知能検査や他の発達検査を実施することを提案しました。

 正樹さんは「なんでこうなってしまうのかがわかるなら、是非お願いします」と検査には前向きで、早速、翌週に検査を実施することにしました。なぜ他の人は簡単にできることが自分にはできないのかと、常に悩んできていたのでしょう。

しばらく休職し、メンタルクリニックへ

正樹「あの、明日から仕事はどうしたらいいですか?」

「今の状態では、しばらく休養したほうがいいと思われます。パニック状態になって、本当に命を落としてしまうことが心配です」

正樹「職場にうまく説明できなくて」

「それは私のほうからしますよ」

正樹「じゃあ、私は家で休んでいていいんですね?」

「はい、そうなります。ただし、医師の診断書は必要になるでしょう」

正樹「どこの病院へ行っていいのかわからなくて。病院はなんか怖いし」

「連携しているクリニックに、こちらから予約を取りましょうか?」

正樹「助かります」

「とりあえず今は、何も考えなくていいんですよ。のんびりしてください」

 その後、正樹さんから教えてもらった職場の直属の上司に電話をかけ、数週間から1ヶ月程度の病気休職を申請すること、なるべく早く医師の診断書を提出すること、復職の目途が立ったら、職場に対して「配慮」をお願いすることを伝え、承諾を得たのでした。目の前で休職がすんなりと決まり、正樹さんは安堵の息を吐いていました。

正樹「こんなに何もかもしてもらえるとは思ってませんでした」

 こうして落ち着きを取り戻して帰路についたのは、夜の10時を過ぎていました。

 翌日、知人が院長を務めるメンタルクリニックに電話をし、初診の日時を組み込んでもらいました。正樹さんにメールで場所と日時を伝えると、「行きます」と返信がきました。

付記 本稿で取り上げる事例は、可能な限りご本人の了承を得て、かつ必要に応じて個人が特定されないよう小修正を加えて執筆したものです。