浜焼きだけではないもう一つの人気アクティビティ
最近は浜焼きを行うと、開店前から長蛇の列ができるのが当たり前になっている。若旦那4人ではさばき切れず、アルバイトを雇うことも多い。
遠方のイベントに招かれることもあり、福島市や山形県米沢市、愛知県名古屋市に出掛けた。広告代理店や電力会社から「東京でやってほしい」という依頼も舞い込んでいる。だが、重さが300kgもある浜焼き台を自力で運ぶのは難しく、現時点では断わらざるを得ない。ちなみに名古屋で行ったのは小さな焼き台での「プチ浜焼き」だった。
もう一つのキーワードは「楽しさ」だ。
久田さんは「私達が楽しそうに焼いていると、それがお客さんにも伝わるようなのです。最初はお客さんとして来たけど、『ボランティアでいいから焼かせてほしい』という人や、手伝いに来てくれる県職員もいます」と話す。
実は、ガイドの会が行っているのは浜焼きだけではない。
松川浦に人を呼ぶために、いくつもの体験メニューを持っている。これはメンバーそれぞれが小さい頃から海で遊んできた経験をもとに設けた。カニ釣りはその典型だろう。
「ナイトフィッシュキャッチという体験ができます。港では大きい魚から逃げた小魚が岸壁に寄り添って寝ています。相馬の港は命の揺りかごになっているんですよと解説しながら、夏の満潮の夜、懐中電灯で照らして網ですくうのです。簡単にとれるので楽しくて、私も子供の頃に熱中しました。夜遅くまで帰って来ず、親に『いつまで遊んでいるんだ』と怒られた経験があります」と久田さんは笑う。
竹竿を作ってハゼ釣りをするメニューもある。竿を作った後、笹の葉が付いた端材をまとめて海に入れると、伝統の「笹浸(ささびた)し」漁になる。「カニや小エビ、ヨウジウオのほか、タツノオトシゴまで獲れます。タツノオトシゴにお目に掛かれるなんてワクワクしませんか」。久田さんは目を輝かせる。
「ムーンロード・スターライト・カフェというメニューは、学生さんと考えました。『東京にいると、波の音を聞きながら、星を見たくなるんです』と話していた子がいて、『そんなの松川浦では毎日見てるし、毎日聞いている』と思ったのですが、『それがいいんですよ』と言われました。松川浦を太平洋と隔てる大洲海岸という砂州があります。そこには何もないのですけれど、寒い時期に地元の銘菓を食べたり、コーヒーやココアを飲んだりしながら、満月が水平線から顔を出すのを待ちます。赤い月が上がると、海面に月の光の道ができるのでムーンロードと名付けました。すっごくきれいですよ」