劇団ひとりとダウ90000のコント番組「劇団90001」が本日23時45分からNHKで放送される。2020年に結成、わずか3年でNHKの冠番組を持つという快挙を果たしたダウ90000。演劇なのかお笑いなのか、そのどちらでもないのか。お笑い感度の高い業界人たちは、なぜダウ90000に、蓮見翔に夢中になるのか。様々な疑問を抱えて、我々はNHKのスタジオに向かった。(全2回の1回目/後編に続く)

ダウ90000の蓮見翔さん

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劇団ひとりは「目盛りがすごく細かい人」

――文春オンライン読者の中心層は30~40代、男女半々ぐらいですが、ダウ90000とは何なのか、正直まだよくわかってない人も多いかもしれません。

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蓮見 まだ30代、40代の層にはあんまり届いてないかもしれないですね。僕らを見てくれてるのは同世代が一番多い気がします。

――劇団ひとりさんともほぼ初共演ということでしたが、いかがでしたか。

蓮見 一緒にコントをやらせてもらうことが決まって「こんな感じでやってくれるかな」って想像しながら台本を書いたんですけど、ひとりさんがすごいのは、当然こっちが意図してないほうには行かないけど、俺が想像してたよりも面白いことを、うっすらずっとやり続けるっていう、えげつなさ、実力ですよね。作・演出をやってきているので「この人上手だなぁ」くらいは分かるんですけど、でもひとりさんは目盛りがすごく細かかった。

――目盛りが細かいとは?

蓮見 持論なんですが、感情を表現する強弱のつまみがあるとしたら、そのカチカチが何個あるかっていうのが演技のうまさに通じると思ってるんです。その感情の強弱が0、50、100とあるのが平均的な役者さんだと思うんですけど、ひとりさんは42と43の差まである。以前男性ブランコの浦井さんにも同じことを感じて、ひとりさんはさらにそこに500もある感じ。

――振り切れ力もすごい。

蓮見 全部壊す力も持っているっていうのが本当にすごい存在だなと思いますね。1人でそれを全部やるっていうのが。「劇団ひとり」という名前の通りだなって。

うまい人とやり続けることは必要

――普段は8人でやっていて、そこに今回の劇団ひとりさんのような別の方が入ってくると、どんな変化が起こるのでしょうか。

蓮見 そうですね。ずっとこの先も8人でやっていきたい。8人の公演のチケットがちゃんと売れてるようにし続けたいという気持ちはずっとあります。となると、8をあんまり崩しすぎるとよくない。でも8でずっとやっていても一生うまくならないなという気もしてて。

「劇団90001」収録風景。前列が劇団ひとりさん(NHK提供)

 以前、勝村政信さんとドラマで共演させていただいた時に、僕らプラス勝村さんっていうドラマだったんですけど、その時に驚いたのが、勝村さんとしゃべってる時だけみんなうまくなる。勝村さんがペースを作ってくれるから、そのペースに乗っかるだけでよくなるんです。でも、勝村さんがいなくなって、次またメンバー2人の会話になるとそのペースが崩れてしまうんです。「ああ、うまい人とやり続けることは必要なんだな」と気づきました。

 なので、こういう経験は本当にありがたいんです。やっぱりみんなには演技をやってほしい。で、自分らの劇場にお客さんを呼べるようになりたいってなった時に、8人じゃなく挑戦させてもらえてるっていう経験が、今の僕らには一番ありがたいというか。