鳥取の田舎から東京大学に進学したものの都会生活にも人生にも戸惑い、自分の感覚に素直に過ごした結果、東大に8年在籍することに。世界を放浪し4か国語を使いこなす著者が送った一風変わった経験をまとめた『東大8年生 自分時間の歩き方』(徳間書店)より一部抜粋。

 世界的サッカー選手、ネイマールに自身のサインをプレゼントした瞬間をお送りする。(全2回の2回目/前編を読む)

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彼が放つ独特の雰囲気やオーラは遠目でも感じられた

 2012年4月、高速バスに乗って初めてサントスを訪ねた日から約2カ月経ったある日、僕はブラジルサッカー界の名門、サントスFCのクラブハウスの食堂でチームスタッフ達と昼食をとっていた。

 

 街で一番といわれているビュッフェ料理は、実際にどれも美味しく、思わず夢中で食べてしまった。食堂内に設置されたテレビには、まさに、そのクラブハウスでいま、あるサントスの所属選手がメディアの取材に応じている様子が映されていた。

 ちょうど僕の席から見える大きな窓の向こうに広がっていた天然芝のピッチのいちばん奥のほうに、テレビに移っていたその選手の後ろ姿と、彼にマイクやカメラを向ける大勢のメディア関係者の姿を確認することができた。

 やがて、取材は終わり、その選手が練習場の向こうからゆっくりこちらへ向かってくる。青と黒の練習着に身を包んだ彼のシルエットはやや線が細く見え、その身体で屈強なディフェンダー達の包囲網を次々に突破しているとは、容易に想像できないところがあった。それでも彼が放つ独特の雰囲気やオーラのようなものは、遠目からでも感じることができた。彼はそのまま、ゆっくりと僕らがいる食堂に入ってきた。リラックスした様子で歩く姿には、どこか体重を感じさせないような軽さがあり、ネコ科の動物が歩いている姿を見たときのような印象を受けた。

 料理を順番に皿にのせると、自分が取材を受けていた様子が映るテレビを観るともなく眺めつつ着席し、少し遅めの昼食をとり始めた。この日、取材対応のため残っていたのは彼だけだったので、食堂内にほかの選手達の姿はすでになく、彼は一人でテーブルに着いていた。