竜王戦は初戦(2回戦)に徳田四段と12月27日に対局した。編入試験の第1局で勝った相手だ。
「せっかく試験で勝てたのに今度はボコボコにされたら嫌だなと思いました。棋譜中継もあって見られるので。徳田四段は角換わりを得意とされていて試験対局に向けてはメチャクチャ準備しました。竜王戦に向け角換わりの研究をさらに深めました(実際には竜王戦は角換わりではなく矢倉系の将棋になった)。負けて試験の出来が偶然だと思われたらどうしようという気持ちも少し……」
徳田四段は対戦前「リベンジマッチです」とツイートもしていた。この対局も試験同様小山さんの後手。試験と違ったのは終盤の入り口で小山さんが苦しい局面になっていたところだ。アマ大会で散々やってきた逆転しやすい局面に持って行くことに「運よくできて」小山さんが勝利。
1月30日(試験第3局と第4局の間)に行われた3回戦では平藤真吾七段に勝った。そして試験合格後の3月6日の4回戦では、藤原直哉七段と対局して敗れ、小山「アマ」としてのプロ公式戦出場は終わった。
「来年の順位戦に参加するのが目標です」
「これからプロとしてふさわしい棋譜を残していくには苦しい局面を耐え抜くことも大事だと感じました。この対局も朝日杯の広瀬八段戦も、前期の竜王戦も公式戦で負けたのは3連続で矢倉系です。今後安定した成績を残すためにこの弱点を克服する必要があると思っています」と小山さんは課題を見すえている。
小山さんは奨励会未経験ということで、奨励会員の義務である記録係をしないで棋士になるとも言われた。「正式な話ではないのですが、これから記録係をやることになるだろうという話は聞いていて、自分としても引き受けるつもりでいます」。
棋士編入試験でのプロ入りが、奨励会の三段リーグ(40名前後)上位2名に入ってのプロ入りと違うのは、A、B1、B2、C1、C2の5クラスに分かれ年間10局程度が保証される順位戦には参加できない点だ。順位戦のC2クラスに参加するためには、参加できる他の棋戦で一定の成績をクリアしないといけない。
「現実的なのは、いいところどりで20勝以上10敗以内(編入試験と同じく勝率6割5分以上ではあるものの、必要勝数が倍の20勝で長いスパンでの好成績が必要)だと思います。私は早指しのほうが絶対に得意。早指し棋戦で勝ち星を稼ぎ、1年以内にクリアして来年の順位戦に参加するのが目標です」
何でもない目標に思えるかもしれないが、過去にフリークラスからC2に上がった棋士の成績を見ると1年以内はかなり早いケースになる。試験に合格したあとも、小山さんは試験中と同じように研究会をして、将棋の勉強中心の生活は変えていない。
フリークラスには最長でも10年しか在籍できない。その間にこの成績をクリアしてC2クラスに上がらなければ引退だ。新たな戦いが始まる。
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