いつも大会を優先して出場してきた小山さんの最後のアマ大会は、朝日アマ首都圏ブロック大会。試験に合格したため、全国大会代表は辞退した。代わりにブロック大会決勝で小山さんに敗れた元奨励会三段の知花賢さんが出場した。6大アマ大会のうち5つで全国優勝した小山さんは、朝日アマのみ優勝できずにアマ大会を卒業することになった。そして7月に開幕する朝日杯では、出場権を勝ち取ったアマをプロとして迎え撃つ立場になる。

 プロ公式戦6勝5敗と編入試験に近い星を持つアマの1人でもある知花さんはこう話す。

「小山さんはここ2年くらいで、どんどん強くなったと対局して思います。プロとしても上位にいけるような力があると思うので活躍が楽しみです。私は技術的にまだ足りませんし、編入試験は意識していません。小山さんくらいプロアマ公式戦で活躍できたら考えるかもしれませんけれど」

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編入試験と竜王戦が重なり、大阪へ6回遠征

 今回の挑戦で大変だったことの1つに大阪対局が多かったことがある。直近の新四段は関西が多く試験官5人のうち徳田拳士四段、狩山幹生四段、横山友紀四段、高田明浩四段の4人が関西所属だ(試験官は新しく棋士になった順から5人と決まっている)。

 将棋界では、関西所属と関東所属の棋士が対戦する場合、基本的に格下の棋士が遠征する。神奈川県在住のアマの小山さんは格下となるため、関東所属の岡部怜央四段との第2局以外は、小山さんが大阪に出向いた。

合格を決めたあとの記者会見にて ©相崎修司

 並行して12月に開幕した竜王戦6組にも、小山さんは2022年のアマ竜王戦優勝の実績で出場(竜王戦6組にはアマ竜王戦4位までが出場できる)。アマは新四段や奨励会三段との対戦が組まれ、小山さんは徳田四段のいる関西のブロックに入った。これにより、11月~3月で、合計で6局も大阪で対戦するという関東の若手棋士でもあまりないスケジュールをこなすことになった。

「竜王戦は交通費も宿泊費も出していただけるのですが、試験についてはすべて自腹です。どちらも新横浜から往復新幹線で前泊しました。学生時代に大阪の大会に出たときは、交通費も宿泊費も安くあげた気がするのですが、今回はコンディション重視で、ゆっくり休めそうなところに泊りました。

 試験は持ち時間3時間で夕方に終わるのでその日のうちに帰り、持ち時間5時間で夕食休憩後まで対局する竜王戦は大阪にもう1泊して帰っていました。3日かかるので竜王戦については選べるならば東京が良かったとは思いますけれど、最近の新四段は関西ばかりなので仕方ないですね」