「女性として昼間に働く」ことはハードルが高い
――同じ調査の中で「生活に困窮した際にどこに相談をするか」というアンケートの結果もあるのですが、「LGBT他」の方ほど、行政に相談しづらい傾向もあるようです。
西原 ああ、それは大いにあると思います。
――このあたり、どうしてなのかなんとなくイメージできますか?
西原 そもそも、行政に対する不信感が強いのかもしれません。窓口で傷つけられてしまった経験を持つ人も多いし、私自身も「また嫌な顔されちゃうのかな」「どういう風に扱われるんだろう」とか不安に思った経験があるので。
周りでもよく聞く話ですが、例えばトランス女性が生活の相談に行くと、窓口の人から「じゃあ男の格好で、髪を切って、普通に就職してくださいよ」と言われてしまうケースが結構多いですね。それで精神を病んでしまう子もたくさんいます。
そういう子から私に「男として就職しろと言われたんだけど、どう思う?」と電話がかかってきたことがあって。「就職はしやすくなるかもしれないけど、また病んでしまうんじゃない?」と言ったんですが。
私たちにとっては「女性として昼間に働く」というのは、まるで夢の中の話のようにハードルが高いことなんです。
差別をされる対象ほど生活が困窮しやすい
――西原さんの過去の取材記事で拝見しましたが、トランスジェンダーの方は水商売をされている方が多いのだとか。
西原 以前はとても多かったですね。私自身、大学生の頃は薄化粧にユニセックスな服装をよくしていたのですが、そうすると夜の仕事……水商売や、いわゆる性風俗の勧誘がすごく多くなるんです。
――それはやはり「女性として昼間の仕事をするのが難しい」からなのでしょうか。
西原 そうですね。世間の認識というか風潮もあるでしょうし、当事者でも「昼職なんてどうせできない」と考える人が少なくないでしょうから。私より先にトランス(性別移行)した女性の先輩からは「私たちのような存在が昼の世界で生きていけると思うな」と言われたこともあります。
特に私が学生だった頃、もう15年以上前ですね、当時は「トランス=夜の仕事でしか生きられない」みたいなイメージってすごくあったと思います。
――周囲の偏見や差別的な意識が、当事者の方々の就労に影響を与える、というのはすごくイメージできます。
西原 非常に問題だと感じるのは、差別をされる対象ほど、就職が難しかったり収入が低かったり、生活が困窮しやすい点です。