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性的マイノリティに対しての誤解や偏見

――それだけ世間的な認知が広まった、ということでもありますよね。

西原 そうですね。特に近年は、これまで潜在的に存在していた、性の悩みを抱えている方や、同性愛、トランスの方の多くがはっきりと自身がそうであると自覚したり、表面化し始めている段階だと思うんです。

――今は、いわゆる社会実装の部分だったり「じゃあ、みんなが共生していくためにはこういう法律が必要だよね」「こういう制度が必要だね」といった過渡期のフェーズで壁に直面している感じなのでしょうか。

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西原 そうだと思います。で、そういう動きが大きくなると不都合を感じる人がいたり、衝突が起きたりすることもある。だからこそ今、トランスヘイトであったり、性的マイノリティの方に対しての誤解や偏見が入り混じってしまっているのではないかと思っています。よく知らないことって、誰にとっても怖いことだと思いますし。

――西原さんは当事者としての発信もされていますが、世間からの無理解や批判を受けることはありますか?

西原 あります。トランスジェンダーの貧困問題についてお話をすると「お金がかかるなら性別適合手術をしなければいい」といったことを言われたり。

 

性別適合手術を「好きでやってるんでしょ」と言われることも

――「そうすれば費用を抑えられる」というような?

西原 そうですね。「好きでやってるんでしょ」と言われることが多いのですが、私たちはそもそも好きでトランスジェンダーになったわけでもない。心と体の性別が違うという、人とは違うスタート地点に生まれたというだけなのに。そういうことを言う人は「性別適合手術」を、エステなどの延長線上にあるものだと認識しているのかな、と思ってしまいます。想像がつきにくい境遇なので、仕方がないのかもしれませんけど。

――単純に「綺麗になりたいから手術している」といった解釈をしているケースはありそうですよね。

西原 「お金がないならエステ行くのやめたら」「好きなことしてお金がないだけなんだから自己責任」的な言い方をされることはとても多いですね。治療の一環で手術をしているわけですし、痛みにも耐えなくてはなりません。

 お金もかかるし好きでやっているわけではないですけど、人には理解されないし、就職も難しいし。はっきり言ってハードモードですよね。

撮影=山元茂樹/文藝春秋

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