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やられ役の背中を見て勇気づけられている人もいる

 そればかりか、味方であるはずのロッテのゼネラルマネージャーをしていた広岡達朗さんが「あれは私が相手監督でも怒りますよ。どうして園川を出してしまったのか」と一緒になってキレたコメントが報じられ、これぞ私たちが求めているロッテであるというのが示された瞬間だったわけです。

 その後、日本ハム戦を見物していたら大量ビハインドの6回に敗戦処理で園川が出てきていきなり連打からデューシーに3ランを浴びたりして盛大に失点しながらも淡々と試合終了まで投げたり、伊良部がアクシデントで序盤で途中降板した後に園川が出てきて大道若井湯上谷に連続タイムリーを打たれたりしていて花を添えていました。普通であれば何しに出てきたんだおまえって言われるところなんですが、園川なら何となく許されるのもまたバリバリのパ・リーガーの貫禄とも言えます。

 園川といいアスレチックスといい、大谷さんのようなスーパースターやかつての常勝軍団西武ライオンズに蹴散らされるやられ役を運命づけられながらも、案の定やられてとぼとぼと帰る背中を見ながら「これでいいんだ。俺も生きていていいんだ」とどれだけ勇気づけられているかだと思うんですよ。

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裾野が広いからこそ、頂点が高くなる

 暗黒阪神が少し勝てるようになって日本シリーズに出てみたら、似たような感じで少し勝てるようになった千葉ロッテに4試合全敗33対4で阪神ファンがみんな悶絶するのも、単にネタとしてではなく、自分の人生に投影してるからでしょう。

「行けると思ったのに、やっぱり駄目だった」とか「よりによってあの巨人より弱いロッテに完敗させられた」などの一つひとつのエピソードがコンテクストとなり、そういうピラミッドの裾野で汗かいて石を運んでる黒タイツ戦闘員がキラキラの仮面ライダーに蹴散らされるのもまた人生の味わいなんです。裾野が広いからこそ、頂点が高くなるのだ。社会の、業界の、ジャンルの裾野にいることの価値を知るからこそ、メジャーリーグやWBCが楽しく見られるのだなと。

©文藝春秋

 今後の大谷さんの活躍を心からお祈りしております。

 頑張るだけじゃなくて、とにかく怪我をしないように。