東海道新幹線に乗るときの楽しみといえば、車内でいただく駅弁やビールもいいけれど、やっぱり富士山ではないかと思う。
冬場のよく晴れた日には、新大阪方面に向かう下り列車の進行方向右側の車窓から、壮麗な富士山の姿を望むことができる。春になって、これからは富士山が望めることは少なくなるが、だからこそ見えた日には気持ちも昂ぶる。久々に新幹線に乗った人はもちろんのこと、年がら年中乗っている出張族でも、車窓から富士山が見えれば悪い気はしないのである。
富士山が新幹線からいちばんよく見えるのはどこだろうか。実は条件に恵まれれば東北新幹線の車窓からも見えるほど、日本一の山の偉容はとてつもない。
が、東海道新幹線で、というならばやはり三島~新富士間だろう。富士山がいちばんキレイに見える、寝て通り過ぎてしまってはもったいない区間だ。
さて、このあたりで今回の本題である。三島~新富士間で富士山がよく見える、などと言われても困る。大半の人は「のぞみ」に乗っているから、三島駅も新富士駅も通過する。「のぞみ」対応でいうなら、新横浜~名古屋間。これではあまりにおおざっぱだ。だから、三島~新富士間がどのあたりなのかを把握しておかねばならぬ。
三島駅は、伊豆半島の付け根の西側の駅だ。「のぞみ」こそ通過してしまうが、「ひかり」の一部は三島駅にも停まるし、ウナギが旨い観光地でもあるから知っている人は多いだろう。問題は、新富士駅である。
東海道新幹線「のぞみ」の“ナゾの通過駅”「新富士」には何がある?
富士山が見える、富士山に近いということはなんとなくわかる。“富士”っていうくらいですからね。でも、日本一の山の名前をいただく町となると、あまりに裾野が広すぎて、かえってどこにあるのか見当がつかない。
それに、三島駅と違って新富士駅には各駅停車の「こだま」しか停まらない。乗り換えられる路線もない。東海道新幹線の駅の中で、まったく他の路線と乗り換えられない駅は新富士駅だけだ。つまり、東海道新幹線においていちばんのナゾの駅は、新富士駅といっていい。
東京から1時間10分…「新富士」にやってきた
そういうわけで、「こだま」に乗って新富士駅にやってきた。
「こだま」はおおよそ1時間に2本走っている。東京駅から新富士駅までは1時間10分ほど。在来線の東海道線で東京駅から1時間10分では小田原駅にもたどり着かない。新幹線がいかに超特急であるか、ということは各駅停車の「こだま」でもよくわかる。新富士駅は、静岡県東部、富士山のちょうど真南にある駅だ。