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「自分はなぜ人間に生まれてきたのだろう?」WBC日本代表を率いた栗山英樹監督が“人生に絶望した過去”を明かす

「自分はなぜ人間に生まれてきたのだろう?」WBC日本代表を率いた栗山英樹監督が“人生に絶望した過去”を明かす

『栗山ノート』より #5

2023/04/07
note

「自分はなぜ人間に生まれてきたのだろう」

 栗の樹ファーム(編集部注:栗山英樹氏が設立したスポーツ複合施設)で過ごしていると、「自分はなぜ人間に生まれてきたのだろう?」と考えることがあります。クワガタでもチョウでもなく、栗山英樹という人間としてこの世に存在している意義は――答えの出ない疑問です。答えを必要としているわけでもありません。

 人間として生まれてきたからには、障害にぶつかっても自分が進みたい方向へ突き進んでいこう。自分に与えられた使命を全うしようと、私は考えます。

©文藝春秋

「失敗は成功のもと」と言われます。「若いときの苦労は買ってでもせよ」とも言われます。失敗や苦労は人生において貴重な経験となり、将来の糧になる。

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 間違えてもいい。失敗をしてもいい。逆境に正面から立ち向かっていきましょう。「この道を究めるのだ」との志を立てていれば、突破力が身に付いていきます。

 そして、頑張っているあなたを助けてくれる仲間が、必ず現われるはずです。

習坎はまことあり。これ心亨る。行けば尚ばるることあり

『易経』からの引用です。「習」は重なるで「坎」は陥り難むことで、「習坎」は非常に困難なことを意味します。大変な苦しみに遭いながら、そこから多くのことを習う。心のなかにある噓偽りのない思いは何よりも強い。勇気をもって苦しみと向かい、また楽しいときが来ると信じて進んでいく――私はそんなふうに解釈しています。

 2019年4月23日の東北楽天ゴールデンイーグルス戦で、杉浦稔大を先発投手に指名しました。シーズン初先発だった彼は、5回までに9奪三振を記録して、ひとりの走者も出していない。パーフェクトピッチングです。

 札幌ドームで試合を観ていた方、テレビ中継をご覧になっていた方は、「今日の杉浦は絶好調だな」と思ったことでしょう。しかし私は、5回を投げ終えた時点で交代させました。

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