〈あらすじ〉

 1953年、ロンドン。役所の市民課に勤務する、“お堅い”英国紳士のウィリアムズ(ビル・ナイ)は、妻に先立たれてから孤独で空虚な人生を送っていた。無表情で淡々と仕事をこなす彼を、部下たちは陰で「Mr.ゾンビ」と揶揄していた。

 そんなある日、ウィリアムズは癌で余命半年と宣告されてしまう。残された時間の充実について思いあぐねる中、かつての部下マーガレット(エイミー・ルー・ウッド)と再会して時間を共にするうち、彼女のバイタリティに感化され、役所でたらい回しにされていた案件に情熱を注ぎ始める。市民課の新人ピーター(アレックス・シャープ)はその姿に驚くが――。

〈解説〉

 黒澤明監督の『生きる』(1952)を、イギリスを舞台にリメイク。死期を悟った孤独な男性が、人生を見つめ直すヒューマンドラマ。ノーベル賞作家カズオ・イシグロが脚本を手掛ける。オリヴァー・ハーマナス監督の長編第5作。103分。

  • 中野翠(コラムニスト)

    ★★★★☆黒澤監督版『生きる』をなぞっても、志村喬の、あの、厚ぼったく武骨な人物像には及ばない。不満はあるものの必見。

  • 芝山幹郎(翻訳家)

    ★★★★☆節度のあるリメイクだ。猿真似はしていないし、オリジナルを出し抜こうとする愚かな自己主張もない。古謡が耳に残る。

  • 斎藤綾子(作家)

    ★★★★☆残された時間を覚悟して、穏やかに真剣に辛抱強く行動するウィリアムズ。最期の表情に浮かぶ静かな微笑みが美しい。

  • 森直人(映画評論家)

    ★★★★☆驚くほど上質なリメイク。ビル・ナイ用に誂えた英国式パターンの洒脱さ。余計な事を一切せず、サイズ調整も美しい。

  • 洞口依子(女優)

    ★★★☆☆黒澤スピリットを翻案したイシグロ脚本。第二次大戦後の英文化と社会状況を見事に適合。ビル・ナイの『生きる』だ。

  • もう最高!ぜひ観て!!★★★★★
  • 一食ぬいても、ぜひ!★★★★☆
  • 料金の価値は、あり。★★★☆☆
  • 暇だったら……。★★☆☆☆
  • 損するゾ、きっと。★☆☆☆☆
© Number 9 Films Living Limited

INFORMATION

『生きる LIVING』(英)
TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開中
https://ikiru-living-movie.jp/