日本と比べて1週間から10日ほど速い
「鶏は、約43日間で出荷できる。エサからなにからすべて六和(山東六和集団は、中国最大の農牧企業。問題になった上海のKFCにもここが納入していた)から降りてくるんだ。流通も六和がやる。北京近郊でソーセージなどにも加工しているようだ。
抗生剤が人体に影響がないかって? それは当然あるだろう」
ちなみに、日本の養鶏場で育てられるブロイラーは、およそ50日間で出荷される。無投薬の場合には約60日とされる。したがって“速成鶏”は、日本のブロイラーと比べて1週間から10日ほど速く仕上がる計算になる。死んだ鶏を出荷していた冒頭の河南大用にいたっては、わずか30日で鶏を出荷していたという。
日本でも中国でも、成長ホルモンや抗生剤を鶏の体内に残留させないための「休薬期間」が設けられている。日本の場合ならば1週間だが、出荷日数からわかるように中国では厳格に休薬期間を遵守しているとは言いがたい状況がある。かくして薬漬けの鶏肉が出回ることになる。
死骸は「犬のエサとして売れる」
続いて、付近の養鶏場でも取材を行った。本業は、ビニールハウスで野菜や果物を生産する農家のようだ。
「投資額は16万元(約240万円)だ。この1棟で8000~9000羽ほど飼育できる。大手の仲介業者を通じて売るんだが、やつらは最初だけは儲けさせるんだ。だんだんと卸値が安くなったり、その他のコストがかかるようになって、利幅が減っていく。卸値は仲介業者が決めるんだ。飼料等もここから買うので、経費を差し引いた額が手元に残る。それでも多い年では5~6万元は稼げる。5年ぐらいで投資は回収できるよ」
交渉の結果、養鶏場の内部に潜入することに成功した。
「2日に1度掃除すればいいだけだから、管理は楽だよ。流通先は、山東省のウェイファン(濰坊)にある冷凍倉庫。そこから加工工場に行って、KFCやマクドナルドに行くんじゃないか」
詳しい流通先については、生産している本人もよくわかっていないようだ。
養鶏場の中は、薄暗く空気が澱んでいた。入り口には、鶏の死骸が8羽ほど。とがめるような視線を業者に向けると、「これは犬のエサとして売れる」という。1つのゲージには6~12羽ほどの鶏が押し込められており、急激な成長のせいか、十分に羽毛が生えそろわず、地肌が見えている鶏もいた。