『НАШИ В СОЛСБЕРИ(ソールズベリーの男たち)』というゲームを御存じでしょうか。2018年にロシアのおもちゃ会社Igrolandが発売し、イギリス国民から特大級の悪評をつけられたボードゲームです。内容としてはシンプルな双六ですね。大人から子供まで楽しく遊べる、デザインだってよくもまぁこんなに可愛らしく仕上げたものだと感心する出来栄えですよ。
しかし、悪評にも理由はあります。本作は同年イギリスで発生した「ソールスベリー毒殺事件」という実在の化学テロをテーマにしており、イギリス政府はこの事件の実行犯がロシア軍の諜報員だったと断定したものの、ロシア政府は真っ向から否定し容疑者の身柄引き渡しを拒否しました。
つまりこのゲーム、そんなセンシティブな情勢下でロシア側から出てきた、イギリスの国民感情を逆撫でするブラック・ユーモアだったというワケです。
ナチス政権下のドイツで作られたあまりに“明白”なゲームたち
その後、イギリスを含めたヨーロッパ諸国とロシアの関係性は悪化の一途を辿り、2023年現在彼らがどのような関係になっているかは……敢えて説明する必要もないでしょう。
娯楽は娯楽であるがゆえに、属する社会の価値観に大きな影響を受けます。当然ゲームもまた然り。社会が大きく変動するタイミングには、価値観を色濃く反映するゲームが世界中で作られてきた歴史がある。特に戦争ほど大きな社会変動ともなると関連作も果てしない。
多種多様な形で作られてきたそれらのゲーム達ですが、実はたった一つだけ、共通点があります。現代に生きる我々から見ればその内容が“結末”に繋がっているのは明白にもかかわらず、当時遊んでいた人達にはまだどんな“結末”を迎えるのかは分からなかった、ということですよ。
例えば……ナチス政権下のドイツに生きた人々には“結末”がどう見えていたのだろう、とか。もしも興味がおありなら、ちょっと私と一緒に当時のゲームを遊んでみませんか?