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《写真多数》どうしても飲み込めなかった“ドリアンがゆ”、プルンプルンのオタマジャクシ、強烈にカビ臭い保存食…「秘境で出会ったヤバい飯」

40カ国以上取材したカメラマンの「世界のメシ」#2

2023/04/23
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 海外旅行で異国の料理を楽しみたい人は多いだろう。どんな食材を、どのように調理するのか。その国を知るには台所と食卓を見るのが一番早い。 

 世界各地40カ国以上を取材で訪れ、ホテルのレストランから家庭料理に屋台のつまみまで、いろんなメニューを体験した私が、今までに出会った食の中から、印象深かった料理を紹介する企画。前回の美味しかったメニューとうって変わって今回は「申し訳ないけど、正直かなり厳しかったメニュー」編。(全2回の2回目/前編を読む)

1、タイ・アンダマン海の「ココナッツミルクのドリアン粥」

 タイ南部の都市プーケットから船で1時間ほどのところにヤオノイ島はある。日本でも人気のタイ料理。酸味と複雑なハーブの香りに虜になった人も多いのでは。そんな魅惑的なタイ料理の中でも、特に海鮮を使ったメニューを取材するべく、この島へ飛んだ。

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タイ南部の都市プーケットから船で1時間ほどのところにあるヤオノイ島。この島で出会った忘れられない料理とは…

 しかし島のセレクトは成功だったのか失敗だったのか……。アンダマン海に浮かぶ島には大勢の漁師さんがいる。毎日美味しそうな魚が水揚げされ、屋台や居候先のご家庭で様々な海鮮料理を取材できた。ただひとつ誤算だったのは、この島がタイ南部に位置しているということ。

屋台では種々様々な海鮮料理が提供され、居候先の漁師さんの家でもお母さんが大きな魚を捌いて色々なメニューを提供してくれたヤオノイ島。ただ誤算も…

 すぐお隣はイスラム教の国マレーシア。そうこの島は、仏教国タイにしては珍しく、島民のほぼ全員がイスラム教徒だったのだ。当然、島には一本の酒もない。とんでもなく新鮮で美味しい海鮮タイ料理を酒なしで食べ続ける日々は、酒好きの私にとって厳しいものであった……。

島暮らしも1週間が過ぎた頃…

 そんな島暮らしも1週間が過ぎた頃、居候先の家族に連れられて近くの民家を訪れることになった。お互いに拙い英語で会話すると、どうやらこの家の人のお葬式らしい。部外者の外国人としては、なかなか緊張する場面だ。

仏教国タイにしては珍しく、島民のほぼ全員がイスラム教徒だった。当然、島には一本の酒もない

 民俗学の視点から、営まれるお葬式が非常に珍しい風習のときには、失礼も顧みずなんとか記録できないか交渉することもある。しかしそうでない場合、距離感が難しい。積極的に関わるのも変だし、傍観者に徹するにしても居心地が悪いものだ。

 その日も私は、なんとなく神妙な顔をしながら、あたりを失礼ない範囲でウロウロしていた。しかし父ちゃんも母ちゃんも、様々な人への挨拶に忙しいらしく、なかなか戻ってこない。

真夏の南の島の昼時。暑さにさまよっているとおばさんの手招きが見えた

 真夏の昼間、場所はアンダマン海の島である。めちゃくちゃ暑い。時刻はちょうど昼時だった。半ば朦朧としながら彷徨っていると、あずまやから笑顔のおばさんが手招きしている。思わずフラフラと屋根の下に入ってしまった。