コロナ禍もひと段落。そろそろ海外旅行を楽しもうって人も多いのでは。
異国を訪れる目的は人それぞれだろうが、やはり異文化の「食」を体験する楽しみが一番って人も多いと思う。
そこで世界各地40カ国以上を取材で訪れ、超豪華レストランから場末の屋台まで体験した私が、今までに出会った食の中から、印象深かったメニューを紹介しようと思う。まずは「エッと思う見た目に反し、非常に美味しかったメニュー」から。(全2回の1回目/続きを読む)
1、サハラ砂漠の砂の中で焼くピザ
アフリカ大陸北部に広がる世界最大の砂漠「サハラ」へ遊牧民を訪ねて旅をした。モロッコ東部の街メルズーガでガイドを雇い、ラクダの背に揺られてシェビ砂丘を目指す。
シェビ砂丘の麓にあるオアシスは、広大な砂漠の真っ只中にあるが、都市部からのアクセスが比較的良いため砂漠観光の客が多い。今回の旅は、このオアシスの管理を仕事にするイデルさんのテントに居候しながら、遊牧民の暮らしを取材する。
そんな砂漠のオアシスを訪ねて数日が過ぎたころ。
「今日はベルベルピザをご馳走するよ」
母ちゃんはそう言うと、父ちゃんと娘のベッタちゃんに下準備を命じた。働き者のベッタちゃんは早速、食料テントに向かい天幕の下の地面を掘り出す。サラサラの砂だから、女の子の手でも簡単に掘れるのだ。
すると中から大量の人参が現れた。そうここは、天然の冷蔵庫なのだ。サハラ砂漠の昼夜の温度差は大きい。日中は50度を超える炎天でも、夜、日が陰るとみるみる0度近くまで気温は下がる。日に照らされた屋外の砂は焼けるように熱いが、テントの内側をほんの数十センチ掘るだけで、びっくりするような冷たい層が現れる。