3、パプアニューギニアの“ヤバい”豚の丸焼き
海外旅行の慣れない食事で腹痛を経験した人も多いだろう。旅行カバンに胃腸薬を忍ばせておく……というのも、昔からよく聞く「定番アドバイス」だ。
私もいくどとなく旅で腹を壊し苦しんできた。そんな中でも最もひどかったのが、パプアニューギニアで豚肉を食べた日の夜だった。
ニューギニア伝統の山の暮らしを続けるフリ族の生活を取材するため、ジャングルの奥深くにある村を訪ねた。美しい民族衣装で有名なフリ族だが、現実には多くの若者たちはTシャツとズボンで暮らしている。
しかし年配の男たちの中には、今でも鳥の羽で飾り立てたカツラを被り、鼻に茎を通している人もいて興味深い。村長や長老の話では今が過渡期であり、これからどんどんと暮らしは西洋化していくのだろう。
村に滞在して1週間。村長は祝宴のために豚を一頭潰して丸焼きパーティーをしてくれることになった。その調理方法は「豪快!」の一言だ。まず市場で交渉して買ってきた豚を棍棒で殴ることから始まる。
そうして屠畜した豚をいったん焚き火で丸焼きにし表面の毛を焼き切った。次に巨大な斧が登場し、くわえタバコの親父がザクザクと腹を開いて内臓を取り出し、塩やらハーブやらを擦り込んで、調理のための下処理が終わった。
同じころ、若い衆たちは巨大な焚き火を起こし、拳大のゴロゴロとした石を大量に熱していた。親父は大きなバナナの葉で下処理した豚を包みこむと、その焚き火の中に埋めていく。そうサハラと同じく地面をオーブンにして、肉の塊を蒸し焼きにするのだ。
これは美味そうだとワクワクしながら待っていると、若い衆が真っ赤な肉がのった皿を私へ差し出しニコニコ笑っている。
よく見れば焚き火の残り火で、削ぎ取った豚の塊肉を炙っていた。おそらく丸焼きが完成するまで、相当の時間がかかる。その空き時間を繋ぐために、村長の指示で肉を少し切り分けて炙り焼きを作ってくれたのだろう。