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「そろそろラオハイといこうか」
「そろそろラオハイといこうか」
副村長の合図で、小ぶりだが重厚感のある壺が運ばれてきた。場の中の長老格らしき男が重々しく頷くと、芝居がかった手つきで封を切る。ゴリッと音がして蓋が開けられた。ワクワクして中を覗き込むと、土のような塊がギッシリ詰まっている。
さてどうするのか見ていると、次にカテーテルが登場した。なんとも医療道具の多い村だ。若い衆が、何本ものカテーテルを壺の中に差し込んでいく。副村長はその一本を口に咥えると、私にも一本を渡し咥えるよう手振りで指示をした。
恐る恐るカテーテルから吸い上げると…
恐る恐る口に当てると、壺の中に水が注がれる。
「あ、甘い……」
カテーテルから吸い上げた液体は、ほのかな甘みのある白い酒だった。壺の中に詰まっているのは、発酵させた餅米らしい。気づけば、村中の男たちが集まり、カテーテルを咥えてチューチュー吸っていた。酒の度数はそれほど高くなさそうだ。風味としては韓国のマッコリに近い感じか。甘さに爽やかさも感じられ、蒸し暑い夜にとても美味しい。
「しかし、なんでカテーテルなんだ?」
素朴な素焼きの壺に対して、シャープな輝きの透明なカテーテルはあまりに風情がない。何かこう、竹か何かで作った伝統的ストローがあるのでは……。しかしそれは都会から来た旅行者の勝手な願望なのだろう。
「だってカテーテル、便利じゃない」
そう言ってニヤリと笑う副村長が、濁った水を壺に注いだ。その手にあったのは、エンジンオイルの計量ボトル。おそらくその水は村の横を流れる川の水だろう。今夜の下痢を覚悟した私は、ズズッと勢いよく白い酒を吸い上げたのだった。