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《写真多数》砂にまみれたピザ、濁った川の水で割った酒、ナマの豚肉…極限の現場で出会った「ヤバい見た目のウマい飯」

40カ国以上取材したカメラマンの「世界のメシ」#1

2023/04/23
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 ベッタちゃんは掘り出した人参を茹でてマッシュし、母ちゃんが粉から練ったピザ生地で包んでいく。これは美味そうだ。

ピザ生地で人参を包む
見るからにモチモチした生地

 そのころ、父ちゃんは砂の上に円を描いて、そこで薪を燃やしていた。ひと通り燃やし終えると、円の内側を掘る。熾火がチリチリと燃えていて、結構な熱さになっているのがわかる。ここに食材を埋めたら、良い感じに蒸し焼きができそうだ。そう、父ちゃんは砂のオーブンを作って予熱していたのだ。

砂漠の地面に作った砂のオーブン。木のない砂漠では薪も大変な貴重品。ベルベルピザは遠来の客への盛大なもてなしなのだ

 ここで日本の家庭ならば、アルミホイルで包んだ食材が登場するところだろう。しかしここはサハラ砂漠のど真ん中。砂漠のキッチンにそんな選択肢はなかった。熱々の砂の上に、モッチモチのピザが直接置かれ、その粘りの強そうな生地に砂が乗せられていく。

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加熱時間は10分ほど。文字通り砂の中からピザが…

 加熱時間は10分程度だろうか。パリッと焼かれたベルベルピザが砂の中から取り出された。表面は良い感じで焦げていて、あたりに香ばしい匂いが漂う。私に気をつかってか、母ちゃんが表面の砂粒をフーフーと吹き払ってくれた。

熱々の砂で焼かれるピザ
表面の砂粒を払ってくれた

 包丁でバリバリッと切り分けて供されたピザは、焼けた小麦の香ばしさと人参の甘くしっとりとした食感が絶妙で、非常に美味かった。まあ想像通り、大量の砂混じりだったけどね。

 ただ、何日も砂だらけの砂漠で暮らしてると、思ってたより気にならず、たまにでかい粒が歯に当たったらぺっと吐き出すだけ。人間、慣れればどこでも暮らしていけるもんだと悟った、非常に思い出深い一品だ。

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