中国の省や国家行政機関(省庁)のトップレベル以上の高官と深く付き合うと、党内の権力闘争の巻き添えを受けたり、「知りすぎた」りしたことで拘束を受ける可能性がある。一時期、在日中国人を含めた日中友好関係者の拘束が多かった理由のひとつはおそらくこれだろう。
とはいえ、たとえば長年にわたり大企業の中国法人を切り盛りしているような人であれば、党高官とのコネを活かし、深い情報を収集しなくては仕事にならない。こればかりは特定の危険業務だと考えて腹を括るしかないと思われる(そもそも、そのレベルの中国通であれば、今回の記事を読むまでもなく一定の自衛策を講じているはずだ)。
逆に言えば、そうしたハイレベルな世界とはほど遠い「上海駐在1年生」という駐在員やただの出張者、普通の留学生などは、党の権力闘争による長期拘束のリスクはほとんど心配しなくていいだろう。
日本側の情報漏洩というリスク源
同じく危険なのは、日本国家で特定の業務をおこなう公務員と深い接触を持つことである。あなたが中国に深く関連した業務をおこなっている場合、たとえば『名探偵コナン』や映画『新聞記者』『シン・ウルトラマン』などに登場するいくつかの官公庁の関係者から連絡が来る場合がある。
日本国内で彼らと1回コーヒーを飲むくらいは仕方ないが(断ると逆にややこしい場合もある)、金銭を受け取ったり協力したりした場合は冗談抜きで危険度が高い。噂レベルの話ながら、2015年以降に中国で拘束された20人近い日本人の、すくなくとも一部については、日本の官公庁の協力者リストが漏洩したことで中国側に狙い撃たれたとする見立てが根強く存在する。
日本人が中国で政治的拘束を受ける最大の要因のひとつは、残念ながら日本国内に存在すると考えていいだろう。なお、1999年に起きた日経新聞記者北朝鮮拘束事件などから判断する限り、日本国家は拘束された自国民の協力者を守るとは限らない。
結局、中国で「拘束」から逃れるには
中国での日本人の「拘束」は、セックスや金銭にまつわる逸脱行為やマナー違反をおこなわない、リスクに見合わない好奇心や親切心・自己顕示欲などを持たない、日中両国を問わず国家の機密には近づかない……。という当たり前のことに気をつけるだけで、一般人の身にはほとんど発生しない。なので、これから初めて中国に赴任・留学する人は、過剰に心配する必要はないだろう。
とはいえ、「体制の矛盾に気づいた中国人に同調するな」「ウイグル人に接するな」といった注意点は、たとえ自分の身を守るためであっても、聞いて決していい気分はしないはずだ。中国の現政権の体制が、すくなくとも西側の価値観を持つ人にとって違和感が大きいものであることは確かだろう。
現在も中国国内で拘束中の日本人たちの、一日も早い釈放を祈りたい。