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血圧が低下…「これはヤバい」

 すぐに釜のある小滝が連続し、これを過ぎると行く手に堰堤が現れた。この堰堤を右側(左岸)から巻いて(迂回して)いるときだった(谷や沢では、上流から下流を見て右側の岸を右岸、左側を左岸という)。右頰をなにかにチクリと刺された感覚があり、その直後から手の指が痺れ出した。痺れは腕や足にも広がっていき、貧血のときのように血圧が低下していくのがわかった。「これはヤバい」と思い、なんとか堰堤の上まで這い上がり、沢の脇にザックを下ろし、ヘルメットを脱いで座り込んだところで意識が途切れた。

 石沢の異変に気づいた仲間は、すぐに駆け寄って介抱したが反応はない。現場からどうエスケープすればいいのか、いったんその場を離れてあたりを観察してみると、左岸の尾根状に登山道が通っているのが確認できた。しかし、石沢は依然として問い掛けに反応せず、意識を失ったままだった。この状況ではひとりで石沢を搬送するのはとうてい無理であり、救助要請が必要だと判断した。

 ただし、そこは携帯電話の圏外だったので、面白山高原駅方面へと移動しながら電波が拾える場所を探した。駅の近くまで来たところでようやく電波が通じ、8時55分、119番に通報して救助を要請した。先方からは、「救急車と消防団を手配するので、面白山高原駅で待機し、救助隊が到着したら現場まで誘導してください」との指示を受けた。15分ほどして消防本部から折り返し電話があり、防災ヘリおよび消防団、救急車の出動を手配中であることを知らされた。

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手足には痺れ、目の焦点もよく合っていなかった

 一方、気を失っていた石沢は、40分ほどが経過した8時50分ごろ意識が回復した。手足にはまだ痺れが残っていて、目の焦点もよく合っていなかった。そばに仲間の姿が見当たらなかったことから、9時12分に彼の携帯電話にかけてみると、すぐに通じた(仲間とは別の携帯キャリアと契約していて、こちらは電波が通じた)。仲間との通話で、彼が救助要請のために現場を離れていたことを知り、石沢も自分の状況を報告した。

 電話を切ったあと、仲間は再度119番に連絡を入れ、石沢が意識を回復したことを知らせ、併せて本人の携帯電話の番号を伝えた。9時23分には消防本部から石沢の携帯電話に直接連絡があったので、とりあえず現状を説明した。

 9時38分、消防本部から再びかかってきた電話に、石沢は「しばらく休んでから自力で下山します」と伝えたが、「すでにヘリは飛び立っている」とのことだった。ヘリはもう現場近くまで来ていたようで、続けてGPSの位置情報を伝えると、すぐに上空に防災ヘリが姿を現した。その後、ヘリから降下してきた隊員によって機内に収容され、山形市内のあかねケ丘陸上競技場へと運ばれたのち、救急車で病院へと搬送されていった。