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岸井 はい、カスッカスッ、みたいな。よくあるのが、(パンチングボールが)くるくる回っちゃったりとか。パンチが見えてくると、それが打てるようになる。

――どれくらいの期間でできるようになりましたか?

岸井 クランクインのちょっと前です。ボクシングのトレーニングはいまも続けていて、パンチは見えるようになってきて、それでも怖いですけど……よけることができるので。

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いまも1カ月に1回はトレーニング

――いまもボクシングを?

岸井 1カ月に1回は行ってますね。撮影では殺陣(タテ)としてのボクシングでしたが、いまはどんどん強くなるという方向で、トレーナーと話をしています。

――強くなるってどういうことでしょうか。

岸井 本物のパンチを打つ。殺陣だとパンチを入れ込んじゃいけないので、本当の体重をのせたパンチを打ちたいと思って。

 

――なぜそう思われたんですか?

岸井 パンチを受けてからですね。本当のパンチは、それまでのとはまったく違ったんです。

――その、本当のパンチを受けたのはいつですか?

岸井 アカデミー賞授賞式の前日です。

――えっ、すごいタイミングですね。

岸井 はい、ちょっと打ってみてくださいってこちらからお願いして。どんどん強くなっていくので、いいですよ。

「あなたはこれをやります」

――この映画は元プロボクサーの小笠原恵子さんの著書『負けないで!』を原案にされていますが、撮影に入る前にあえて原作を読まず、ご本人にも会われなかったと伺いました。それはなぜですか?

岸井 プロデューサーの意向です。名前も「小笠原恵子」から「小河ケイコ」になっているし、(彼女の)コピーではない。新しいケイコとしての物語であるというところが強調されていて、原案を知っているがゆえに監督との意見の乖離が生じてしまうことがないように配慮されたのだと思います。

 もちろん、三宅(唱)監督は原案を読み込んでいるし、私は三宅さんのつくった物語を一緒に歩んでいく、というやり方で納得していました。結果としてもそれがよかったと思います。

 

――ケイコ役をオファーされたとき、どう思われましたか?

岸井 あの、「まんぷく」の頃にもらっていたんです。

――えっ、4年前の取材のときはすでにオファーが?

岸井 ありました。ちょうど「まんぷく」の撮影が終わった日に。小笠原恵子さんのボクシングの話をやりますっていうことだけが決まっていて、いつ撮るかも、監督が誰かも決まっていなくて、でも「あなたはこれをやります」みたいな。しかも、原案は読まないでくださいって……。