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「ボクシングは痛いし怖い。でも…」糖質制限ときつい増量、岸井ゆきの(31)が主演映画『ケイコ 目を澄ませて』で考え抜いたこと

岸井ゆきのさんインタビュー #1

2023/04/30

genre : エンタメ, 芸能

note

トレーニング、食事制限で増量

――手がかりがなさすぎますね。

岸井 私はなにかあったときの恐怖よりも、なにが起こるかわからないことのほうに恐怖を感じるので、私ひとりで背負い込まなきゃいけない、という時間はすごく怖かったです。どの仕事でもそうですけど、映画をやるときに監督が決まっていないのは、なにも決まっていないのに等しいので。オファー自体はすごくうれしかったですが、私はなにから始めればいいんだろうって。ボクシングもしていないし、耳が聞こえる。どうしようと思いました。

――役柄としてはすごく難しそうです。

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岸井 それまで肉体を変えていく役へのアプローチを経験したことがなかったので、3カ月間ほぼ毎日トレーニングに行って、食事制限もして。増量があんなにきついとは思わなかったですね。

 

――食事制限は具体的にどんなことを?

岸井 糖質制限をしながら体を大きくするので、とにかく食べなくちゃいけなくて、ささみとか、きのこをいっぱい食べてました。それだけではタンパク質が足りないので、プロテインも飲んで、常にお腹がいっぱいの状態で。糖質が足りないから頭が回らなくて、すごく狭小な世界になってしまうんですよ。そのあたりは劇中でもトレーナー役だった松浦慎一郎さんと監督がサポートしてくださったんですけど。

――いまは元に戻りました?

岸井 2021年の3月にクランクインして、いまようやく、2年かけて戻りましたね。しばらくはもう大きいままで。

――大きいというのは、具体的には体重が増えたということですか?

岸井 筋肉ですね。体を大きく見せるために僧帽筋を鍛えていたので、肩まわりが大きくなって、痩せようと思ってもまず筋肉を落として脂肪に変えてから、その脂肪を落とさなくちゃいけないので、ずいぶん時間がかかりました。

 

――ボクシングだけでなく、手話も一からですよね。手話という言語をどうやって学んで、会得していったのでしょうか。

岸井 ボクシングと一緒で、その人たちの生活を知るところから始めました。まず、話を聞く。たとえば、映画ではケイコが扇風機の風で朝起きるシーンがあるんですけど、起きるために明かりを使う人もいれば、振動の人もいる。