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 家族がどんな思いで、故人が帰ってくるのを待っていたのかを思えば、手が出てしまうのも仕方がない。もし自分だったら、同じことをするだろう。話しかけて、触ると思う。日本人にとって遺体は“物”ではなく、そこに姿がある限り生きている人間と同じ感覚でしかない。最後の最後まで遺体の顔に触れ、頬を撫でていたい。だが文化が異なれば考えも違うようだ。

福岡行の便に載せるため、再び遺体をコンテナへ

 棺を再び霊柩車に載せる。役所に提出するための書類がまとめられ、棺につけられていたネームプレートも封筒の中に入れられた。霊柩車が向かったのは、羽田空港の貨物エリアだ。このカウンターで福岡行の午後便に載せるための遺体の搬送手続きを行い、準備されたコンテナへと向かった。

写真はイメージ ©️AFLO

 羽田空港の貨物エリアも成田空港同様、雑然としていた。じゃがいもや玉ねぎの絵が印刷された段ボールが山積みされ、その横に白菜の絵がついた段ボールが並べられている。荷物を引き取りにきたトラックが何台も並んで駐車し、ドライバーたちが段ボール箱を荷台に積み上げていた。そのすぐ脇をゆっくりと霊柩車が進むが、作業に集中しているのか誰一人気にしない。

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 遺体を搬送するための銀色のコンテナは、奥まった屋根付きスペースに置かれ、棺の到着を待っていた。霊柩車の後部ドアが開かれると、作業員一同が棺に向かって一礼。棺を丁寧に降ろし、大型の計量器へと運ぶ。ここで棺の重量が計量され、貨物としての取扱手数料が決まるのだ。重さは故人が90kg、ドライアイスが10kg、保存液が5kg、棺やカバーが10kg、計115kg。

 計量をすませると、棺をコンテナ中央に安置する。作業員たちに礼をし、重量が記録された用紙を持って、先ほどのカウンターへ戻った。手数料を支払って、東京での作業が終了。同行取材もここで終わった。

「きれいにしてもらったと喜んでいました」

 羽田を飛び立った飛行機は、夕方、時間通り福岡空港に到着。待っていた地元のスタッフが棺を貨物エリアで受け取り、霊柩車に載せ、遺体に問題がないか、口元から漏れがないかを確認。自宅で待つ故人の家族へ連絡し、棺を無事に自宅へ搬送した。

「家族の皆さん、ご遺体を見てきれいにしてもらったと喜んでいました。お世話になりましたと伝えてください」という遺族からのメッセージが、搬送スタッフによってA氏らに伝えられた。