マーガレット 最近のクイーンの子たちにジェンダー批判みたいなものはあんまり感じないね。我々の中で〔クイーンたちが競い合うアメリカのリアリティ番組〕『ドラァグ・レース』【注4】以前、以後のクイーン〔という線引き〕がありますね。
――以後のクイーンは何が違うと思われますか?
マーガレット 何が一番変わったかっていうと、今の若いクイーンたちはドラァグ・レースに出てるクイーンみたいになりたいと言って始めるわけ。我々〔の世代〕は少なからずともグレタ・ガルボになりたいとか、マレーネ・ディートリッヒになりたいとか、日常的な女ではないけれども、女に憧れて“女”をパロディにすることをしてきた。けど、今はクイーンに憧れて、クイーンを目指そうとしている。それは大きく違うと思うのよ。
――シモーヌ深雪【注5】さんも同じことを話されていました。今の子たちは今いるクイーンたちの真似をしようとしてるのかもって。
マーガレット 世代論なのかしら。おそらく今、ドラァグ・レースとかに出ている人気者のクイーンの子たちは儲かってる。だからビジネスとして成功を掴むためには彼女たちみたいになればいいっていう発想がどっかにあるのかな。たぶん時代遅れの映画女優とかに憧れてキャッキャ楽しんでいるようなのは、最もお金を気にしないタイプなわけじゃない。そういう違いがちょっとある。シモーヌとかもお金のためにクイーンをしているわけじゃないでしょ。
――そのあたり、東京の地域特性などはあるんですか?
マーガレット そこに対して何か言いたいけれども、大阪の状況が分かってないからちょっと何とも言えない。
――クイーンの商業化、またはお金儲けのためにクイーンをやる方がいるということですか?
マーガレット もちろん、いるだろうね。
――そんなにクイーンって儲かるんですか?
マーガレット 儲かるような雰囲気だけはある(笑)
――ディナーショーとかに呼ばれる話とかではなく、動画配信や、CDデビューとか?
マーガレット CDデビュー、それはまた別のイシューとして語りましょうよ(笑) やっぱりゲイプライドなんちゃら、みたいな代々木公園のところでおっきな企業看板キャンペーンガールとして、クイーンが「はい!」みたいなことやってたらさ、さぞかし金もらってるんだろうって、傍目からは見えるよね。
実際いくらでギャラが支払われてるか知らないけど、華やかにも見えるじゃない。テレビに出てるというだけですごい金もらってると一般の人は思う。僕もコメンテーターみたいなかたちでも〔もらうのは〕せいぜい3万円よ。なんだけど、一般的にはクイーンってスターで人気者みたいな。
まあ、あと、たぶん副業的にYouTubeでカウント稼いだりとか、物売りしたりとかしてるクイーンが今多いから、そういうとこでちょこまか小銭稼いでるんでしょうね。それは別に東京に限らないんじゃない。
ドラァグクイーン=性の境界線を引きずる者?
――『バディ』(97年1月号)では、“ドラァグクイーンはバカらしいヘテロ(異性愛)社会を笑い飛ばし、その境界線を攪乱させるものであり、とても政治的なものだ”と書かれていますね。
マーガレット あらためて「Jumpin' Journal ドラァグクイーン・スペシャル」は、手前味噌だが、画期的な特集だと思ってますよ。
――札幌のパレード〔99年のパレード〕のガイドブックに、ドラァグクイーンをやり始めた時には政治的な意識なんてなかった、政治性は後から取ってつけた理由なんだ、と書いてありました。政治性をドラァグクイーンに結びつけるようになるきっかけ、時期についてお話し頂けますか。
マーガレット 何でまたこんなことわざわざ書くかって言うと、そこら辺のことが次世代の戦略足りえるような気がするから。っていうことがそれの答えかな。もうとにかく昔からゲイリブってだせえ活動だ、モテないブス〔の集まり〕だよって〔多くの人が思っているから〕。