クイーンという「化け物」
マーガレット とにかく〔ドラァグクイーンを〕やる人を増やしたい。っていうのでわりと分かりやすく、ある意味おバカキャラみたいな〔記事の書き方をしてきた〕。でもそうなるとほんとに楽しいだけでやってくバカが増えてくる。
僕がすっごい不愉快だったことが1つあるの。ドラァグクイーンが出演する小さい箱で行われたパーティーに、タイからニューハーフの子たちが〔遊びに〕来たの。その時に「え、あの子たちはクイーンじゃないよね。ニューハーフだからあんな人入れちゃダメだよね」とかある子〔ドラァグクイーン〕がしれっと言うわけよ。
――ニューハーフだから…。
マーガレット 〔これまで書いてきた記事などで〕「楽しいよね」「カッコイイよね」みたいなのをあまりにも言い過ぎてしまったから、自分たちがカッコイイ・偉い存在だって勘違いするクイーンが出てきたんじゃないかと思った。そんなもん視点変えれば、ニューハーフだろうが、ドラァグクイーンだろうが、ノンケの人たちから見たら変わりはしない化け物なんだ、というところが全然伝えきれていなかったという事件だった。
――お話を聞いていると「化け物」って言う言葉に愛着を感じているように思います。
マーガレット 「化け物」、愛着ありますね。だって化け物だって思われてきてるわけだから。
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【注1】ゲイ・バイ男性を主な客層とするゲイバーでは、通常営業の際、スタッフの性表現は男性であることが多い。ただし、店の周年記念やスタッフの誕生日など、限られた日にのみ女装や仮装が行われることがある。その際の名前は、通常営業と変わらない。
【注2】ダイアモンド・ナイト……1989年にシモーヌ深雪、DJ.LALA、ミス・グロリアス(故)によって立ち上げられたワンナイトクラブイベント。現在は「Diamonds Are Forever」として京都を中心に活動を展開している。出演メンバーには古橋悌二ことミス・グロリアスをはじめ、マルチメディア・アーティスト集団「ダムタイプ」に所属していた者も多い。90年代京都におけるアートシーンやHIV/AIDSの啓発など社会運動の結節点の一つでもあった(『MAMリサーチ006:クロニクル京都1990s―ダイアモンズ・アー・フォーエバー、アートスケープ、そして私は誰かと踊る』森美術館、2019年)。
【注3】PRIVATE PARTY……1989年から15年間続いた男性限定のクラブイベントパーティー。新宿花園町の「ミロス・ガレージ」、歌舞伎町のライブハウス「LIQUID ROOM」、東京・芝浦の大箱クラブ「GOLD」などでも開催された伝説的な大型ゲイナイトである。「ラジオシティ」は大和実業が運営していたディスコクラブ。大阪
(梅田・アベノ)、名古屋、東京(日比谷・新宿)にチェーン展開をしていた。1986年、旗艦店である日比谷店が開店、ディスコブームの終焉した1998年に閉店した。
【注4】『RuPaul's Drag Race』(ル・ポールのドラァグ・レース)……アメリカの有名ドラァグクイーンであるル・ポールが主催するコンテストの中で、様々なクイーンが賞金を目指して課題に挑戦するアメリカのリアリティ番組。
【注5】シモーヌ深雪……シャンソン歌手であり、「西の女帝」として日本を代表するドラァグクイーンとしても知られている。自身がオーガナイザーを務める「Diamonds Are Forever」(毎月京都で開催)は、日本で最も歴史あるドラァグクイーンの出演するパーティーの一つ。