――自分がデビューした頃にもそういう意識は強固にありましたね。
マーガレット とにかくカッコイイ、楽しいみたいな雰囲気を盛り込まないと、運動としてはつらいんじゃないかと言いたかったんだと思う。
――2000年の『SPA!』にも同様の内容の記事を書かれていますね(『SPA!』2000年3月22日号、94ページ)。
マーガレット ドラァグクイーンを語る機会はすごく多くあって、その時にやっぱり読者とかどういう人に向けるかによって相当言い方変えてて、もしかしたら相反するようなこと言ってるかもしれない。
ドラァグクイーンになりたいゲイの子たちの中でただ楽しそう、カッコイイから、みたいなん〔気持ち〕でやるような子には、「それじゃダメよ。バカね」、「ちょっと考えなさい」みたいなこと言ってる。
ノンケメディアとかには「楽しいのよ。実は楽しいところにはこういう意味があるのよ」という言い方をする。ゲイのコミュニティ向けと、ノンケ向けでは相当言い方変えていた。最初のころはね。
やっぱりドラァグクイーンの認知が広まるにつれあんまり〔記事の書き方に〕差をつけられなくなったし、世の中的にもジェンダー〔概念〕みたいなものが浸透していってる時期じゃない? 少なくとも僕がクイーン始めた頃っていうのはいわゆる研究者とか学者の世界は別にして、一般の人の中でジェンダーって言葉を知ってる人ってほんとに限られたフェミ〔ニズム〕とかをやってるような人たちぐらいしかいなかったからね。なるべくジェンダーっていう言葉は使わないように説明をしてきたような気がする。
最初から「こういうジェンダーがなんとかかんとかで、そういう行為なんです」って言ったら誰も〔ドラァグを〕やりたがらないじゃない。母数増やしてかないと、物事ってうまくいかないから。
――マーガレットさんがドラァグクイーンという言葉を知った時には性の境界を引きずる者だという意味合いはすでにありましたか?
マーガレット ない。私が作ったから。
――ええー(笑) 伏見さん(編注:ゲイライターの伏見憲明さん)たちが90年代にクィア(とかキャンプ)とかいろんな概念を輸入したりしていたと思うんですけど、お互いに影響はありましたか?
マーガレット 〔伏見さんが論じていた〕ジェンダーとセックスは違うベクトルのものだっていうことはたぶん一般社会にすごい新鮮に受け止められていたけども、決してそれ自体は新しいものじゃない。〔彼の議論に〕影響受けてというよりは、どちらかというとそういうジェンダー論にドラァグクイーンなりを結びつけて、ちょっとメッセージができたらいいかなというので、その「引きずる」っていう言葉をかけて捏造した。
――たとえば大学などに講演呼ばれてドラァグってこういう性の境界線を引きずることですよって話して、学生が「ほー」ってなってるのをマーガレットさんが見て、「信じ込んじゃって」とか思ったりするんですか。
マーガレット 一応〔説明を〕やっとくかって感じ。でもあたし、これは名文だと思ってるのよ。そんなに的外れなことじゃないし。ただ、それが語源的にどうかっていうことを言われてしまうと、もう捏造してるものだからそんなのはちょっともう怖くて言えないけど。そこはなるべく触れないように避けてきてる…。