診断や治療に迷ったとき、他の医師の意見を聞くことをセカンドオピニオンという。がん手術では必ずセカンドオピニオンを聞くべきだと指摘する医師は多い。岡田医師もその一人だ。それはなぜか。 

岡田 守人(広島大学原爆放射線医科学研究所腫瘍外科教授)
1995年、神戸大学大学院医学系研究科修了。99年、米国コロンビア大学留学。02年兵庫県立がんセンターを経て、07年より現職。

――岡田先生は、日本人は米国の患者に見習うべきところがあると話されておられましたね。

 米国の患者さんは何人もの医師や看護師に自身の病気が理解できるまで話を聞き、自分で判断して治療法を決めます。ところが日本の患者さんは、病気や重症度をよく理解しないで最初の医師に治療を任せてしまいがちです。

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 よく、アメリカは医療訴訟が多いと言われますが、実際は予想するほど多くありません。自分で判断して医師や治療法を選択したのだから、よっぽど医師の過誤がないかぎり納得するのです。しかし日本だと、患者さん自身が医師に任せたのに、トラブルが起こったとたんにクレームをつける人がいます。でも、がんは風邪とは違います。最初の治療選択に「生き死に」が掛かっているのです。

 だからこそ、日本の患者さんも米国のように、命が掛かっている病気ではいろんな人の意見を聞いて、自分で判断するべきだ、すなわち自己責任だと思います。

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――肺がんでセカンドオピニオンが有効なのは、どんな場合ですか。

 少し前まで、肺がんは進行して見つかることが多く、手術するかしないかの選択でした。ですが、近年、CT検診などの普及で、小さくて淡い「すりガラス状陰影」と呼ばれる早期がんの影が肺に多く見つかるようになりました。

 実はこの中に、リンパ節や他臓器に転移しない「非浸潤がん」があることがわかってきました。数ヶ月で大きくなったり陰影が濃くなったりして早めに手術する場合もありますが、5年以上大きくならない陰影もあります。後者の場合、すぐに手術する必要はなく、フォローして手術するかどうか判断するべきなのです。

 ところが、このことを十分に説明せず、すぐ手術という病院もいまだにあるようです。濃い陰影部分がないすりガラス状陰影は、ほとんどが一刻を争うものではありません。早期の小型肺がんと言われたら、セカンドオピニオンを聞いて確かめたほうがいいでしょう。