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「退職金」に対する勘違い

 実は「退職金を余裕資金だ」と勘違いしている人は少なからずいます。サラリーマンにとっては、毎月決まった給料日にお金が振り込まれ、それが生活資金になっています。そんなところに生涯で唯一のまとまったお金を受け取る機会である退職金が振り込まれたら、それは余裕資金であると勘違いしてしまうのは無理もないことでしょう。

 でも本当はそれは余裕資金などではなく、老後の生活をまかなうための大切な資金なのです。なぜなら、定年後はそれまで毎月振り込まれていた給料は無くなるからです。

 投資の経験も知識も、そしてリスクを取る覚悟もない人が「これは余裕資金だ」と勘違いして投資につぎ込むのはあまりにも危険過ぎます。もし失敗して退職金が半分などになってしまったらこれは本当に大変です。

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 2012年以降は基本的には株価も順調に推移してきたので、そんな心配は無用と考える人も多かったでしょうが、2020年に入ってからのコロナショックの時には、退職金で株式にまとまった資金を投資した人は、かなり肝を冷やしたのではないでしょうか。

「退職金投資デビュー」が必ず失敗する理由

 私は投資の経験のない人が株式投資を始めた場合、おそらく9割以上の確率で失敗すると思っています。その理由は二つあります。

(1) 投資を甘く見ている

 長年サラリーマンとして真面目に働いてきた人の中には、「株なんて博打だ」とか「株の儲けは不労所得だ」と考えている人がいます。それは決して正しくないのですが、そういう人がずっとそう思い続けて株式投資をしないというのであれば、それはそれでよいのです。

 問題は、退職金というまとまったお金を手にして少し欲を出して投資を始めようとする人です。そんな人は投資を安易に考えがちなのです。しかし投資というものは、何も勉強しないままでうまくいくほど甘いものではありません。最初はビギナーズラックで儲かったとしても、いずれどこかで必ず行き詰まり、大きな損をする可能性は高いと思います。

(2) 感情の制御ができない

 投資がうまくいかない最大の原因は、感情に動かされてしまうことです。「なーに、株なんて簡単だよ。下がった時に買って、上がった時に売りゃあ儲かるんだから」と言う人がいますが、実際にやってみるとそんなに簡単ではないことに気が付くでしょう。

 下がった時に買うべしというのは正しいのですが、ほとんどの人は下がるとうろたえてしまい、場合によっては売ってしまいます。逆に上がった時には冷静になって売った方がよいケースも多いのですが、嬉しくなって買い増しをしてしまう。

 投資は自分の感情との戦いであり、いかにそれを制御するかが重要なのです。それを理解しないまま安易に投資を始めると、必ず失敗します。