私は投資をするのなら、できるだけ少額で若いうちから少しずつやるべきだと思っています。少額であれば失敗してもダメージは小さいですし、小さい失敗を繰り返すことで、投資を学ぶことができるからです。それに若いうちであれば失敗したとしても、また働いて稼げばリカバリーすることはできます。
ところが、定年退職者が投資で失敗をしてしまうと、取り返しがつきません。だからこそ、「退職金投資デビュー」は絶対やってはいけないことなのです。
定年後の投資で忘れてはいけないこと
退職金投資デビューはやってはいけないとお話ししましたが、退職した人が投資をしてはいけないわけではありません。一度にまとめて退職金を株式投資などにつぎ込むことを避けるべきなのであって、投資そのものが悪いということではないのです。
それに、投資は別に儲からなくてもよいのです。こう言うとおそらくみなさんは「え、どうして? だって投資は儲けるためにやるんでしょ」と思うはずです。その通り、たしかに投資は儲けるためにするのです。
ただ、忘れてはいけないのは、儲けを得ようとすると必ずリスクが伴うということです。ここで言うリスクとは「結果が不確実であること」を指します。すなわち、「投資をした結果、儲かるか損するかはわからない、そしてたくさん儲けたいと思ったらたくさん損する可能性も同じようにあるということを忘れてはいけない」ということです。
どれぐらいリスクを取れるのかは人によって異なります。定年になった時に金融資産を数億円も持っていて、退職金は純粋に余裕資金だという人であれば、それなりにリスクを取って儲けることにチャレンジしてもいいでしょう。でもそんな人はほとんどいないはずです。
「購買力を維持する」ということ
だとすれば、定年退職者が投資をするにはどういう考え方でやればいいのでしょうか。
その答えは「購買力を維持するために投資をする」ということです。購買力を維持するというのは将来物価が上がってもお金の値打ちが下がらないように、せめて物価上昇並みにはお金を増やそうということです。
そもそも高齢者にとって、必要なのは「お金そのもの」ではなく、どんな状況になっても自分の欲しい物やサービスを手に入れることができること、すなわち「購買力」だからです。
正直言って日本の場合、過去20年ぐらいはずっとデフレの時代が続いていましたから、お金の値打ちが下がることはありませんでした。でも今後もデフレが続き、インフレにはならないという保証はありません。もしインフレが来たとしても、公的年金の場合、基本は物価や賃金と連動しますから大丈夫ですが、自分の持っているお金は何もしないと価値はどんどん下がっていってしまいます。
だからこそ、定年退職者にとって必要なのは「大きく儲けるためにリスクを取る」ことではなく、「購買力を維持するためにお金を運用する」ということなのです。
具体的にはどんな投資方法が……
では、具体的にどうすればよいのでしょうか?
実はこれについても、「自分がどれぐらいリスクを取れるのか」によって方法はまったく異なってきます。まったくとは言わないまでも、あまりリスクを取れないという性格の人であれば、株式や投資信託ではなく、国債を買っておくべきです。ただし、普通の国債ではだめです。今のような金利の低い時に買ってしまうと、今後もずっと低いままの金利しか受け取れないからです。